「俺を連れて行きなよ。試したい魔法がいっぱいあるんだ!」
目を輝かせるバドにトトは困ったようにこちらを見る。
そんな顔されたら「私も行きたい」だなんて言えるわけも無くて。
「私がいないからって、はじけないでくださいね!」
精一杯の笑顔で見送った。
家事は一通り終った。
しとしと降る雨を見ながら窓の淵にうな垂れる。
雨が降ると偏頭痛がする。いやに憂鬱になる。
(どこ行ってるのかな…)
随分前に家を出た二人のことを考える。
バドはトトのことを尊敬している。大好きだ。
一方トトもバドを可愛がっているのが目に見えて解る。
だったら自分はどうなのだろう?
バドのことが嫌いなわけじゃない。
むしろ自分にとって唯一の家族。
一番大切な存在。
じゃあ、トトは?
窓の縁に当たってポツン、ポツンと音をたてる雫の音が遠くに聞こえる。
湿った土の匂いと、湿気を含んだ空気がぼんやりと霞んでいく。
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mokuji