ギリシャはいつものように庭の片隅の木下で、猫と一緒の昼寝を満喫するはずだった。
実際、腹の上に1匹、腕の中に更に1匹、腰を下ろした地べたにはゴロゴロと咽を鳴らす猫が絡み合うように2匹ギリシャにへばり付いていた。

何気なく視線を移した先に何の変哲もない小石があったのだ。
特徴を述べよと言われれば、困ってしまうほどのどこにでもある小石だった。
だが、ギリシャはその小石に見覚えがあった。
それは傍らで欠伸をする猫にしてみたら気の遠くなるなるほど昔、ギリシャにとっても最近とは言いがたい、昔のこと。
あれはそう、トルコが珍しくギリシャを、ギリシャの母国に連れてきた時。
その頃はずっとトルコの元で暮らしていたギリシャにとっては、嬉しさと悔しさが入り混じったような出来事で、今でも覚えている。





騎馬民族だから、なのか。
移動は馬に乗ってだった。
まだ体の小さなギリシャは、ひょいっと、襟首を摘まれた猫のようにトルコの馬に乗せられた。
すぽんと、トルコと馬の首の間に挟まるようにされ、「ニオイが移る」だの、「何でお前となのだ」と駄々を捏ね、結局トルコの上司・・・の家臣(決してトルコの家臣ではなく、『トルコの上司の家臣』だ)に乗せてもらった。
ギリシャが嫌いなのはトルコだ。
ギリシャは自分の民の…国の結晶である。そしてトルコも然り。
だけど、ギリシャが嫌いなのは、トルコというあの仮面の男なのだ。
実際、トルコの上司やその家臣にギリシャの民が混ざっているし、生粋のトルコ人でも、ギリシャに親切にしてくれた人間は数知れない。
だが、トルコだけは気に食わないのだ。どうしても。



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mokuji



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