イタリア某所
『………』
人気のない場所、その屋根の上で少女が独りいた
不気味に嗤ったような三日月を背にし、氷のような冷たい無表情で見下す
その視線の先には黒服の集団が2つ
お互いにアタッシュケースを持っているところから、どうやら何かの取引らしい
『
……馬鹿馬鹿しい』
少女は小さく呟き、屋根から消えた
「ブツは持ってきたな」
「当たり前だ……そっちこそカネは用意して来たんだろうな」
相手の男はフッと鼻で笑い、ケースを開ける
そこにはギッシリと札束が詰まっていた
「よし…これで交渉s
[ザシュッ]…Σ何事だ!!?」
お互いがケースを交換しようとした時、遮った不釣り合いな音
「ボ、ボスッ!!奴です!!こ…【氷の死神】です!!」
「な、何だと!?」
「は、早くn
[ザシュッ]ギャアァアッ」
血飛沫が飛び、辺りを真っ赤に染め上げる
『……こんばんは………そして…さよなら』
逆光で表情はよく分からないが、明らかに大きすぎる死鎌を持っていた
「ヒィッ!!」『………』
呆れた…本当にウンザリするよ…
私はただ仕事でここに来た
私はただ死鎌を振り上げた
なのに目の前の男は腰を抜かし、悲鳴を上げた
コイツらのせいで…コイツらのせいで…
私の大切な…大事な家族が死んだんだッ!!
「た、頼む!!許してくれ!!命だけは…ッ」
「お願いだ!!金はいくらでも払う!!」
『……もう喋らないで…耳障りだよ』
ザシュッ ドシャ…金の入ったケースを持った男を斬り捨てる
男の屍からは大量の血が飛び、身体はその血の海に沈んだ
『……次はお前だ』
「ヒイィィイッ!!」冷めた目でもう一人の男を睨みつければ、男は同じく悲鳴を上げて這うように後ずさって行く
後悔なんてさせない
どうせこの男も地面に転がっている奴らと同じ場所に逝くんだから
「お願いだ…私には妻がいるんだ…大切な妻が…っ」
『……』
私にだっていたんだよ?
大切で大事な家族が……お父さんとお母さんが…ッ
それを…お前らみたいな悪徳マフィアが殺したんだ!!
「頼むっ!!」
『……知らないよ、そんなの』
「Σなっ…」
『……さよなら』
ザシュッ短い死刑宣告と処刑
私は自分の服や髪、顔に返り血がどれくらい付こうか気にもしない
『……今日は…20くらいか…』
この呟きの意味は今殺した人数
人間なんて嫌いだ
私という存在なんてもっと嫌いだ
この身体に流れてる血はドス黒く、心臓は憎悪に歪んでいる
腰から下は今まで斬り捨てた屍の山に埋まり、腰から上は這い上がって来た屍に拘束されている
私の両手には拭うことなんて不可能なくらいの真っ赤な血が付いている『……馬鹿馬鹿しい』
私は何を望んでいるんだろう…
家族を殺した奴らに
復讐することか
それとも私自身
“死”を望んでいるのか
『………嫌気が差す』
血がまだ乾ききっていない死鎌を担ぎ、血を浴び過ぎて重くなったコートを翻した
私の頭上では大きな三日月が嘲笑う
『……みんな…大っ嫌いだ…』
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