十年も経てばいろんなものが変わる。
それは人間関係だったり、状況だったり、立場だったり。

十年前はまだ中学生だった自分達も大人になって、あれほど嫌だったボンゴレも継いでボス稼業の毎日。
友達であり仲間だった守護者達も対等であろうとしてもボスと部下という感覚が拭えない。
子供から大人になるってことはそういうことで、寂しさを感じてしまうのは仕方ないことだと思う。

ツナは片付けていた机仕事の切りの良いところでペンを置き、大きく伸びをした。


「ツナくん、お仕事終わったの?紅茶でも淹れようか?」

「うん、そうだね。お願いするよ」


事実上秘書的な立場である名前が気付き、自身もしていた仕事を一旦止めて席を立つ。
向かった隣接する給湯室からカチャカチャと音が聞こえた。

彼女との付き合いも山本や獄寺と同じく、かれこれ十年になる。


「お待たせ」

「今日はケーキ?美味しそうだね」

「最近仕事大変だから甘いものがいいかなーと思って」


生クリームをふんだんに使ったショートケーキは見るからに甘く美味しそうだ。
こうして仕事の合間の休憩時間など事ある毎に彼女が作ったお菓子を食べるのが習慣となっている。

自分自身も休憩することにしたのか、ソファに移ったツナの対面に腰を下ろした名前の分も紅茶とケーキが用意されていた。
それはおそらくツナを気遣っているのもあるのだろう。
仕事をしている自分の傍らでツナは完全に寛ぐことができないとわかっているから。


「そういえばさ、もう十年経ったんだよね」

「私がツナくんと出会ってから?」

「そうそう。あの頃の俺じゃあ、自分がマフィアのボスなんかやってることも名前が今でも俺の隣りにいることも予想してなかったなぁって」


くすくす笑って淹れてくれた紅茶に口づけた。
ストレートで飲めるその紅茶は中学生の時からツナが気に入っているものである。


「『ダメツナ』って呼ばれてたのが懐かしいよ。人って変われば変われるもんだね」


しみじみと言うと名前は「そうかな?」と呟く。
それに首を傾げたツナに対して綺麗に名前は微笑んだ。

まるで野原に咲くたんぽぽのように優しく穏やかに。


「確かにツナくんは成長したと思うけど、変わってはないよ。昔の、優しいツナくんのままだもん」










あらゆるものが変化していく中で変わらないものは、

好きな紅茶の味と作ってくれる甘いお菓子と、そして君のひだまりのような笑顔。



――――――

熾樹さんに捧げる相互記念夢でした。
いやー、久々にツナ夢なんて書きましたよ;
要望通りのほのぼのになっていればいいんですけど……。

改めましてこれからもよろしくお願いします!




叶亜
title.空想アリア