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ツナ・炎真vsデイモン。
その戦いは、希明の目から見てもデイモンの優勢と言う他なかった。
12属性使えるデイモンが6人に分裂し、ツナと炎真の二人が連携を取ろうにも分断されてしまって攻撃は思うようにいっていない。
「ほぉう。これはクリーンヒットです。ですが6人に分裂しているためダメージは1/6なのです。6人同時に攻撃しなければ掠り傷に等しい」
「そんな!!」
6人同時、ね。私でもできるかどうか……。
希明は目を細め、そんなことを考える。
戦いを譲ったのは、ツナのあの提案を受け入れず戦っていれば自身がツナ達の仲間であると認めるようなことになると考えたから。
そして黒幕であるところのデイモンを倒すのはやはり、主人公であるツナが適任だと思ったからだ。
希明は傍観者であって、主人公でもなければヒロインでもない。
「……なるほど。6つのブラックホールを一ヶ所に集めれば同時に攻撃も可能か。だけど、そう長くは続かない上に、古里には自身の防御にまで回す炎がない……」
仲間のために自らの犠牲を厭わないところも、ツナと炎真は似ている。
そしてツナにはその犠牲を受け入れるだけの覚悟と度胸がなく、誰か一人でも欠けることなくて済むと信じている甘い考えがあった。
それが希明が一番疎んでいる思考であり、希明がツナを認めていない理由でもある。
「沢田綱吉に仲間を犠牲にしてまで勝利を勝ち取る器などないのだよ!!」
「だけど他に奴を倒す手段もない。さて、どうする……?」
ツナの仲間を第一にする考えは集団を率いている身としては弱点でしかない。
それを本人が気付いているかは別として、いつかこのような選択を迫られる日がくると思っていた。
「希明……!どうしよう、このままだとボスが……」
「私は手を出さないよ。沢田が任せろって言ったんだからその責任は取らせる」
「……」
「……だけど、クロームが沢田の手助けをするのは自由だよ。何も私に許可を求める必要だってない。好きにすればいい。私はクロームが選んだことなら受け入れるから」
クロームはしばらく希明の目をじっと見つめていた。
やがて大きく頷くと「ボス!」と叫んで駆け出し、炎真の元に行く。
ツナの気持ちに応えたいとクロームが作った霧の防御壁はとてもじゃないが、最大出力のツナの技に耐えきれるとは思えなかった。
「希明……君ならわかっていたでしょう。クロームの炎では絶対に沢田綱吉の技から守ることができないと。なのになぜ、」
「別に嗾けたわけじゃないんだからそんな恨みがましい目で見ないでくれる?助けたいと望んだのはクロームで、実際に行動に移したのもクロームなんだから」
ムクロウに憑依した骸にさらりと返し、「で、どうすんの?」と見上げる。
その視線が意味ありげなものだったのなら腹が立って仕方がなかっただろう。
しかし、希明のその視線はどこまでも無感情であり、親友の生死がかかっているにも関わらず淡泊だった。
クロームのことがどうでもいいというわけではないのはわかっている。
おそらくギリギリになればクロームだけは助けるのだろうと。――そして、骸がそれをわかっていてもそのままにしておけないということも希明は見越しているとも。
「……お転婆娘にも困りましたが、君もなかなか困った人ですね。まぁ、どちらにせよ、今のままでは沢田は撃てまい」
全身の炎を放ち、クロームのバリアを強化した骸が飛ぶことすらもできなくなってリボーンの腕の中に落ちる。
クロームが心配そうな声を上げたが、骸はそれに返すことなくツナに向かって促すように叫んだ。
躊躇わせていた不安の種もクロームのバリアによって解決し、ようやくツナは決意の炎を灯す。
「はぁあ!!喰らえ!!!D!!!」
]] BURNER!!!
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