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自分の力が飛び抜けていて誰もが自分に敵うことがない。
それは自惚れるまでもなく『神』と崇められても可笑しくないのかもしれない。

けれど、それはどうしようもなく『孤独』が付き纏うのだろう。



「これが、世界を欲した男の最期か……」


ユニとγが命を賭した時も顔色一つ変えなかった希明が、白蘭が競り負け]バーナーの炎に焼かれているところを見て表情に薄く感情を乗せる。

憐憫か嘲笑か、それとも哀愁か。
自分でもわからない感情が渦巻いていて。

自分の手でやりたかったとかそんなことを思わないでもないけど、それよりも憎かった男の最期をどう受け止めればいいのかがわからない。


「……今思えば、私が感情が何であれ強くぶつけたのは久々かもしれないな」


佳弥や雲雀を想っても直接ぶつけることはまずない。
特に憎悪なんて感情は前世でもそうそう持たなかったものだ。

だからかもしれない。
湧き上がる感情を持て余してしまうのは。
理解できない事柄に関して希明はとても冷静であり、他人事だった。


「……、」


不意に白蘭と目が合う。
炎に包まれているという状況下で有り得ないはずなのに、確かに白蘭は希明を見て笑った。


(懐かしいなぁ……。初めて会った時の希明チャンもそんな目をしてたっけ……)


1ヶ月ほど前の邂逅が白蘭の脳裏にまるで走馬灯のように駆け抜ける。

この時代の希明と会った回数はその一回だけ。
互いに名前を知ってるぐらいのそんな希薄な関係の間に生まれたある繋がりは、パラレルワールドで得ることができなかった白蘭にとって渇望してきたものだった。

たとえそれが親愛の欠片もない、憎しみで塗れた黒い感情だったとしても。
あの冷めた瞳に自分のことで感情が浮かべばそれだけでよかった。






「雪城希明チャン……だよね?」


全ては1ヶ月前のフランスに遡る。