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ドシュッ、と音につられて空を見上げると戻ってきた転送システムから何かが四方に散っている。


「結局来たわけね……」


顔をしかめながら呟く希明だが、すぐに引かれた腕に視線を空から戻した。
即ち、隣りにいて腕を引いた人物である雲雀に。


「希明も行くよ」

「……はいはい」


確か散った一つは並中の方だったか。
本当にこいつは学校が好きだな。そんなことを思いつつも抗うことはしない。

ここにいてツナ達と行動を共にするよりも雲雀と一緒にいた方が遥かに楽。

希明が雲雀と並中に向かったのは必然の流れであった。


「ちょっと待て、恭弥!希明!俺も行くって、うおっ!!?」


神社の長い階段を下っていると背後から聞こえたディーノの悲鳴。
下り切ってから振り返ると、躓いたディーノがあちこちをぶつけて転がり落ちてくる姿があった。相変わらず、部下がいないと力が発揮できないらしい。

希明は興味なさげに視線を外すと先を行く雲雀を追いかける。
並盛中に戦闘音が響き始めるのはすぐのことだった。




***





「オエー!」

「どうだ?勝ち目がねーのはわかったろ?降参しとくか?」


近くに部下のロマーリオがいるためへなちょこではなく、跳ね馬として鮮やかな鞭捌きにより返り討ちに遭わされた真6弔花・デイジー。

戦闘の被害が及ばないところまで下がって傍観している希明はふと首を傾げた。


「ぼっ……ぼぼっ……僕チンは雪花を捕まえて、ユニ様の居場所が知りたいんだ……。居場所を吐けば許してあげてもいいよ……。吐いちゃいなよ!」


劣勢であるはずのデイジーはよほど自信があるらしく、ディーノの言葉には耳を貸さず降参するどころから上から目線で命令をするように言い放つ。
同時に開匣した太陽サイが勢いよく突進してきた。

それに対してディーノが天馬・スクーデリアで対抗。
大空の特徴である調和により石化し、雲雀の匣兵器がトドメを刺した。
空中で太陽サイは粉々に砕け散る。


「ぼぼっ。僕チンの太陽サイが」

「僕の獲物に手を出さないでくれる?」

「俺に向かってきたんだからしょーがねーだろ?正当防衛だ」


私ってここにいる意味あんのかな。
そう思いながらも、何となく腑に落ちない希明。

もう匣兵器がないと思われるデイジーに再度、降参を持ちかけるがなおも無視してフラフラと立ち上がった。


「ぼっ……僕チンは雪花を捕まえて、白蘭様の元に連れて行きたいんだ……。ワープしてすぐにお前達を見つけて嬉しかったから手加減してたけど……渡してくれないなら僕チンだって怒るよ」

「?」

「手加減とは言ってくれるじゃねーか」


ここまでの戦いは圧倒的に雲雀やディーノ達の方が優勢で。
それがデイジーもわかっているはずなのに、それでも変えない態度に希明は薄っすらと違和感の理由を掴みかけている気がした。


「だってそうでしょ?……たったそれだけの力で……チョイスでも思ったけど、ボンゴレの連中は弱すぎるよ」

「「!!」」


『弱すぎる』に反応して雲雀がムッとし、ディーノが僅かに驚きを見せる。

そしてデイジーはもう匣がないことを認め、「修羅開匣を見せるのはこれが最初で最後だと思うよ……」などと言って、自分の服に手をかけた。

『修羅開匣』……?
匣はもうないと言ってるのに、何をどうやって開匣するのだろう。
そう疑問を抱いたのは当然のことだった。


「白蘭様は言うよ。僕ら真6弔花は――人間を越えた存在だって!!」


ボタンが弾け飛び、露わになった体の心臓部分に埋まった匣。
驚いている希明を含めたディーノ達を余所に、デイジーは先程までと比べ物にならないほどの炎を胸の匣に注入した……。