※もし『デュラララ!!』ではなく『黒子のバスケ』と混合だったら





『やぁ、久しぶりだね』


電話越しに声を聞いた瞬間、全てを悟った名前は思わず苦笑を浮かべる。

電話の相手は携帯のディスプレイに表示されていたし、名前を見た時から薄々と予想はしていた。
けれど、それでもごまかせればと考えていたのに、当の彼は名前の考えをとっくに見透かしていたらしい。

機械を通してでもわかるほどの上機嫌な声音。
ここまで喜びに満ちた彼はいつぶりだろう、もしくは初めてじゃないか。
そんなふうに現実逃避をする名前はこの時点であらゆる予想を立て理解し、またそうなることに諦めていた。


「……そうだね。久しぶり、征十郎くん」

『君と久しぶりの会話だから長く続けたいところだけど……今は一分も一秒も惜しいから省略するよ。――名前、もういいだろう?いい加減、僕のところにおいで』

「……本当、君の耳の早さには驚くよ。東京にいるならともかく、今は確か京都だったよね?さつきちゃんからでも聞いたの?」


呆れた調子で返し、何気なく視線を下に落とす。
肌の露出部分には包帯が巻かれているのが見え、血が僅かに滲んでいるのが否応なく視界に入った。

確かに彼・赤司の言う通り、「もういいか」という気持ちがあるのは事実だった。


『いや、僕が個人的に君のことはいつでも知れるようにしていただけさ。すぐにでも君を迎えられることができるようにね』

「始めからこの結果がわかっていたような口ぶりだね」

『そうでもないさ。僕の予想以上に続いたと思うよ。……そして想定以上にくだらない結末だ。僕がそっちにいないのが残念でならないよ』

「……俺としては征十郎くんがこっちにいなくてよかったかな」


冷えた口調にたとえ向けられたのが自分じゃないとわかっていても身震いする。

――目を閉じれば『元』仲間達との思い出が甦った。
すでに過去となった、大切だった記憶。

自身を偽っていたとしても大切にしているつもりだったものだけど、もう名前にとっては不要のものに成り下がっている。
すでに赤司に言われるまでもなく、切り捨ててしまおうと決めていた。


「いいよ、そっちに行くよ。もう限界だとは思ってたんだ」


肉体や精神的に限界がきているわけではない。
ただ、もうこれ以上期待したところで無意味なものだと気付いてしまった。

そのことに悲しいと、寂しいと思う心はあったけれど。
見限ると決めてしまえば未練を残すこともない。

そうしてこの日、名前は並盛から姿を消した。











名前が赤司達と出会ったのは中学生の頃。
練習試合のために並盛にやって来た当時同じく中学生だった帝光バスケ部と出会い、紆余曲折を経て名前の本来の姿を知り、そして友人となった。
仮初の姿の『沢田綱吉』を振る舞うことに慣れ切った名前にとって、偽らなくていい相手がいるというのは戸惑いがあり、むず痒くもあり、嬉しくもある。

だが、その関係は隠さなければならないものだった。
マフィアという裏社会と関わりがある名前は表の世界で生きる赤司達を巻き込みたくなかった。

だからこそ秘密にしてきた関係だったけれど、それももう終わるだろう。
否。赤司が必ず終わりにさせる。
赤司はずっとこの時を待っていたのだから。


「――あぁ、それじゃあ待ってるよ。また後でね」


たとえ名前を赤司家で保護し匿ったとしても、いずれボンゴレには見つかるだろう。
真実を見抜けない愚かな連中とはいえ、そこまで無能だとは思わない。

けれど、その時にはすでにボンゴレでは手出しできない存在になっているはずだ。


「家の力が有効なのは表世界だけ。だからマフィアである名前に手を出せなかった。……でも、今は違う」


名前はもうボンゴレから除籍されたことによって一般人となった。
表の世界の力が通用し、そして裏社会に居座るボンゴレは赤司財閥に対してマフィアの力を行使できない。

やっと手が届く範囲までやって来たのだ。彼女を逃すつもりは更々ない。
ボンゴレとはさっさと決着をつける予定であるし、帝光の仲間達も黙ってはいないだろうが高校を卒業するまでに自分のものにする自信もある。

赤司は堪え切れずに零れる笑みを浮かべ、ただ惹かれ続けてきた彼女が自分の元に来るのを待っていた。




――――――

櫻さんリクエスト夢でした。

もし「崩壊」がデュラではなく黒バスと混合だったらということで、ひたすら赤司に出張ってもらいました。
おそらくこのバージョンは赤司の独壇場となるでしょう。最終的に夢主を手に入れるかは別ですが。
他のメンバーも出したかったんですが、高校生設定ですからね。他校に行ったキセキを集めるという展開が思い付かず、仮に書けたとしても一話で収まる自信もなかったので赤司のみの登場となりました。

企画に参加くださりありがとうございます。
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叶亜