「ねぇ、どっちがいいと思う?」


二つのネックレスを指し示しながら問いかけると、一護は眉間に皺を寄せて見比べる。
視線は二つを行ったり来たり揺れて、時折名前へと動いた。

電車に乗って二駅。
二人を知らない場所なら、詳しくいうなら二人が双子であると知られない場所ならばどこでもいい。
そんな思いから空座町から少し離れたところにある近すぎず遠すぎない町をデート先に選んだ。

昼食も済ませてぶらりと町並みに繰り出した二人は名前が目に止めた雑貨屋で足を止めていた。


「……こっちがいいんじゃねぇか?」

「蝶?」

「あぁ、確か花の奴は持ってただろ?」


蝶がモチーフのネックレスを背後から名前の首元に下げた一護は、鏡に映った名前の姿に満足そうに頷く。


「やっぱりな。よく似合ってる」

「……じゃあ、これにしようかな」


名前は照れ臭い気持ちなりながら鏡越しに微笑んだ。

買ってやろうかと言う一護を大丈夫だと断って店先で待ってもらうよう頼み一人でレジに並ぶと、二人のやり取りを見ていたのだろう。女性店員は微笑ましそうな表情を名前向けた。


「カッコいい彼氏さんですね」

「……そう見えます?」

「はい、とってもお似合いですよ」


にこにこと笑いながら言われた言葉に悪い気はしない。
それでも否定も肯定も返さなかったのは背徳感がいつだって心の奥底で渦巻いているからかもしれなかった。

双子だと知る者はいつも一緒にいる二人を大抵は仲の良い兄妹だと微笑ましく思ってくれる。
けれど中には、仲が良すぎると異端に映る人だっているのだ。

仕方のないことだと思う。事実、二人の関係は禁忌と呼べるものなのだから。


「ありがとうございました」


袋に包まれた商品を受け取り、名前は店員の声を背後に待つ一護の元に向かう。

せっかくのデートなのに気分が下がるなんて勿体ない。
一瞬だけ陥った思考を振り払うように名前は笑顔で大好きな背中に飛びついた。


「お待たせ」

「うおっ、と。飛び付くなよ。危ねぇな」

「ごめんごめん。それで次どこ行く?」


無邪気な笑みに毒気が抜かれたのか、一護は苦笑しながら名前の手を取る。
指先は自然と絡み、きゅっと力が込められ繋がれた。

いつのまにか暗黙の了解になっていた恋人繋ぎ。
二人を知らない町の中だけでは恋人同士だと主張して過ごそうと。
禁忌を思えば密やかにすべきことだとわかっていたけど、恋人を自慢したい気持ちがあるのはどちらも同じ。

いくら後ろめたい関係だとしても、堂々としていれば不信感は抱かれにくいものだと二人は知っていた。


「お、あの店少し見ていいか?」

「もちろん。今度は私が一護の選びたいな」


好き。大好き。愛してる。
繋がれた手から伝わる気持ちが歪んでいても狂っていても構わない。

たとえ綺麗な想いだけではなくても、それが確かな一つの愛の形には変わらないのだから。




――――――

蜂さんリクエスト夢でした。

ラブラブ……になってますでしょうか?
何だか予想よりも甘さの欠ける話になってしまいました……。
タイトルの「caramel」は「カラメル」の方で読んでください。甘いけど仄かに苦い、そんなイメージで選びました。

企画に参加くださりありがとうございました。
これからも当サイトをよろしくお願い致します!




叶亜