「すきです!!!!!」

ぶはっと先輩は口から茶色いものを吹き出した。
汚いです先輩!
それからコーヒー牛乳がもったいないですよ!

「おっまえって、やつは…!」

手の甲で口元を拭う先輩かっこいいセクスィ!
先輩そんな涙目で睨まないでください興奮する。

「ほんっとうになんなんだおまえ」

「1年Dクラス29番高槻律です!」

「知ってるわ!」

「えっ!先輩私のこと気になってたんですね?!」

「阿呆!」

そんな照れなくてもいいのに…。
残念。
私が先輩に告白すること早二ヶ月。
一日一度の告白を目標に頑張っているのです。
しつこい女は嫌われる?はっ、どうでもよろしくってよ。

「はあ…」

「あら、先輩お悩みですか?」

「お前が悩みの根源だよ。」

「まあ、嬉しいです。先輩そんなに私のこと考えてくれてたんですねっ!」

「馬鹿!」

ああ先輩かわいい。やばいかわいい。
なんだっけこういうの?オニカワ?あ、死語ですかそうですか。
眉間に皺を寄せてタオルで机をぐしぐし拭いている。
ああ綺麗好きなんですね先輩、タオルを一度洗いに行かれた。
やだ清潔感のある先輩素敵。

「ったくもう、何がしたいんだお前は」

「先輩に愛を伝えたいです。」

「わかったから、」

「いいえ、私のこの重みを伝えきるまでやめることなど」

「やめい!」

あーあ、ともう一度タオルで拭いてそれを窓際の手すりにかける。
ああ、皺にならないようにタオルぱんぱんする先輩ってかっこいい。
私がこんなになったのはあの雨の日のこと。
あっ想像つくって?いいからおだまりなさい。
傘を忘れてしまった私はどうしよう、なんて思ってた。
みんな傘いる?とか大丈夫?とか聞いてくる中、さっさと私に見向きもせず傘をさして通りすぎていったのが先輩で、ああなんて優しい方なのだろうと。
私は恋に落ちたのだ。
なんていうか、フォーリンラブ。
もう先輩のこと以外みえない、他はサルみたい。

「お前さあ…はっきりいって、邪魔。」

「ああ嬉しいです!私が授業に遅れてしまうのではないかと心配しているんですね!
 大丈夫です、間に合うように帰ってますから!」

「違うわ!」

やー仲いいなあと先輩のお友達の方が通りすがりに言ってゆく。
きゃあ!
赤くなった頬を両手で覆うと先輩の隣の席の沙理奈先輩がもう付き合っちゃえばいいのに律ちゃんと、と笑う。
ですよね!
ああんもう沙理奈先輩すき!

「あたしも律ちゃんすきよ。」

「きゃあ両想いですねっ!」

「ほら、混ざりたくなったんじゃない?」

沙理奈先輩に抱きついているとはんっと先輩のほうをみて笑う沙理奈先輩。
先輩は顔を少し赤くしてちげえよという。
ああああかわいいい!

「別に、混ざりたくなんてねえよ。」

「えっ先輩照れ屋なんですね!かわいいですすきです!」

「すきすきうるさい!恥じらいをもて!」

「あっ、先輩…!そんな、私に恥じらいなんて…求めるほうが間違ってます。」

「そんな見下した目で見るな馬鹿。」

先輩の科白に被せるかのようにチャイムが鳴る。
あっ予鈴!
そんな…殺生な。
後ろ髪を引かれつつ、先輩に向けて口を開く。

「それじゃあ、物理応用に遅れちゃうのでいきます…。」

「ってお前そんなナリして理系かよ!」

「ばりばり理系です!先輩は文系でしたよね!」

「まあ…」

「また明日も来ますね!」

「ああ」

はじめて返された許可の返事に一気にテンションマックス!
うふわああ!
階段を勢い良く駆け下りて1-Dと書かれた教室をくぐる。
ガッツポーズ!





「あれ、今日来ないねえ…律ちゃん。」

「…ああ、なんだか違和感がある。」

教室を飛び出していった翌日、しつこい後輩はこなかった。
なにかあったのだろうか、なんて俺が心配してやる義理は無い筈なのだけれど。
事故にあってたらどうしよう、見舞いに行くべきだろうか。

「…って、そわそわしすぎだってば。
 もう、ほんと律ちゃんが好きなんだね。」

「ばっ」

「違わないでしょ、そんなに心配そうな顔して。
 もう告白オーケーしちゃいなよ。」

「…だって、女から告白されるなんてなんか癪だろ。」

俺から告白したいのに、その隙を与えてくれないんだあの後輩。
好きだっていいたいのに言わせてくれねえんだ。

「あっはっはっ!!!女々しいっ!」

「笑うなど阿呆。」

「あーっ、笑ったぁー。
 ハイハイ、律ちゃんの住所教えてあげるよ。」

「…すまん。」

手渡された紙切れを身長にポケットにしまう。
目に浮かべた涙を拭ってでもまた溢れてる沙理奈は阿呆だ。
あーあ、早く授業終わんねえかな。





「あの、俺だけど。」

「えっ先輩!?」

やだどうしよう!
先輩が家に!
風邪のせいで昨日はお風呂は入れてないから汗臭いし、ああどうしよう!
とりあえずあがってもらわなきゃ!

「あの、こんにちは…。」

「ああ、邪魔する。」

少しだけ開けた扉の向こうの先輩は、ずかずかと中に入ってくる。
きゃあ先輩が私の家に!
どきがむねむね!

「あっ、こっちです。」

靴を脱いだ先輩をリビングに誘導する。
私の部屋なんて来られたら溜まったもんじゃない!先輩に幻滅されちゃう!
って…靴を脱いでる時の先輩もかっこいい…。
先輩はホットコーヒーがすきだから、と冷蔵庫から豆を探す。
機械に掛けて、先輩が座ったソファーの向かいに腰掛ける。

「あの、?」

「付き合うか。」

あっ、幻聴が聞こえ始めた。
熱でも上がったのかな。
先輩は何事もなかったかのように肘掛けに肘をついている。
あっかっこいい。

「っておい、聞こえてるか馬鹿?」

「えっ…!?」

「付き合うのか付き合わないのかどっちなんだよ。」

「えっ、えっ、幻聴じゃないんですか?!」

「は?」

「あっ、付き合います!付き合いたいです!」

幻聴じゃないならもうこんなチャンス逃すわけない!
たとえ幻聴だとしても気にしない、だっていい夢をみているわけだから!

「そうか。」

珈琲の豆挽きが終わった音を聞いてフィルターをセットする。
蒸らしたりしながら淹れて、暖めたカップに注ぐ。
どうぞ、と差し出すとありがとうと言われてどきゅんときた。
ああっ、そのカップを持つ手セクスィですう!
手入れをしているようで、つやつやと輝く爪。

「うん、うまい。
 どんな奴にも一つくらい才能ってあるんだな。」

「えへへっ!」

先輩にほめられちゃった!!!
うわああっ!
先輩はコーヒーを飲んで、体に気をつけろよといって帰ってしまった。
よし、明日には学校いけるようにがんばろう!




「先輩!!すきですっ!!!!!」

「だーっ!うるっせえ!」

「…アンタ達付き合い始めたんじゃなかったの。」

沙理奈先輩が呆れた目で見ている。
先輩にぎゅーっと抱きついてそうですよ!と笑う。

「…付き合う前よりうるさくなってるわあ…」

「褒めちゃやですっ沙理奈先輩!」

「褒めてねえだろうが!暑苦しい離せごみ!」

「きゃっ!」

怒鳴る先輩も素敵っ!
先輩に愛を伝えるのをやめるときなんてある筈無いじゃないですか!



(20120722)
ごめんなさい。



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