「あれ、雪代ちゃん!久しぶりだねぇ」

「お、寄ってかない?いい物入ってるよー!」

「おまけしてあげる!」

久しぶりに街に行くと皆が声をかけてくれる。
伊代君は街についた瞬間にふらふらと消えた。

「…ふぅん、結構栄えてるんだ」

「ね、治安がいいって評判だよ!さすが旦那!」

けらけらと笑いながら香屋さんに入る。
ここのお店の結構好きなんだよねとか言いながら。

「そう、ならよかった」

ふ、と嬉しそうに笑う旦那に目を奪われる。
民のことを考え、民のために行動し、民のために治める。
土地を治める魔王によって、すごく差があるのは仕方のないこと。
旦那はいい魔王に部類されるらしい。

「…だからかなぁ」

優しいから嫌いになれないんだよなって。

「あれ、そうだったんだ。僕のことが好きだったわけじゃないんだー」

「…DOKUSINNJUTSU!」

「変なことしてないで早く買い物して」

「はーい」

…いやいや。あなたが読心術するから。
なーんていっても無駄ですよね!はい、わかってまぁす。


「ゆっきっしろちゃぁん!」

あとは食料とケーキでも買ってかえろうか、そんな話をしながら
勢い良く突っ込んできた何かをみた瞬間腕を引っ張られる。
身を委ねて旦那にもたれかかりながら先程まで己がいた場所をぼんやりとみる。
だぁんっと音をさせながら突っ込んできた物体が壁にぶつかる。

「…いったぁ…!」

「…何この女」

「…弥月ちゃ、」

突っ込んできたのは金髪の年若い少女。
いてて、と頭を撫でながら、旦那を睨んでいる。

「…誰よ、これ」

「…旦那」

「はぁ?!あんた結婚してたわけ?!」

「…はあ」

なんで未婚だと思われるんだろうか。
知らねえよってきそうでこわい。

「僕は飛鳥。君は?」

「私?私は伊代弥月よ。」

…あっれぇ、なんか聞き覚えのある名字。
旦那と私は眉間に指を当ててほぐし始めた。
ああ、頭がいたい。

*前 次#



Bookmark