「まったく、流季兄さんだけならともかく…流雅兄さんまで、」

「ちょ、雪代ひどくない?!」

「「ぬ教」はとてもいいものだ。」

「…うーん、ぐっちゃごっちゃ?」

おいこらそこぉぉぉおおお!
なーにゆったりのったりまったりな的な感じでティータイム楽しんでんの?!?!?

「だってさ、ソレ、終わりそうにないじゃん?」

「ねえ、それ私に言う?!私に言うの?!?!」

「うん」

「旦那ぁあああああああああ!」

「くす」

くすって!いまこの人くすって!
目を細めて美しく笑うけど正直言って目からすごく今楽しいよオーラが出てるんだよねっ!
人で遊んでるよね!

「…はあ、」

「…どうかしたのか?雪代」

溜息を一つ、心配した流雅兄さんが声をかけてくれる。

「…なんでもないよ。」

よく考えれば、宗教なんてその人の自由だし、って…ね。

「兄さん達、気を付けてね。
 宗教にはまりすぎないこと。」

「わかってるよ!」

「大丈夫。」

…大丈夫、だといいんだけど。
いやな予感がする。
「ぬ教」って聞いた時から、背筋に汗が流れる。
あ、なんか風邪ひきそう…
まあ、いいか。

「旦那」

一段落ついたところで声をかける。

「いいの?」

「うん、」

だって、少し寂しくなっただけだから。
ゆっきはまだ、じゅーろくだっからー!

「おえ、っ」

吐く振りしやがった、この男!
ひどくない?!冗談だよ!?

「酷くない酷くない。あはは」

「目を見て堂々と嘘が付けるってすごいよね!」

「嘘じゃないよ、(多分)」

「多分っていうの聞こえたから!」

「おいおいおいおいおいおいおひ、った!」

「…なにやってんの?流季」

「ちょ、流雅この野郎!
 裏切りやがったな!」

私と旦那の間に入り込もうとした流季兄さんは舌を噛んだ。
うわあ、痛そう。
でも日頃の恨みが残ってるから良い気味としか思えない。

「で、なに?」

「なーに二人の世界作ってくれちゃってんの?!
 お兄ちゃん許しませんからね!」

「「うわぁ、気持ち悪い。」」

「おいこら流雅!雪代!」

「ほんとアリエナイ!」

「俺、流季と血繋がってるとかやだ。」

「私もー。」

二人で兄さん虐めを楽しむ。
当分の間、来れそうにないし。
旦那を見ると、穏やかに笑ってる。
もう少し待ってくれそうだけど、

「…そろそろ帰るよ。」

「あれ、泊まっていかないの?」

「家に帰らなきゃいけないしね。」

家。
マイホーム。
私が帰るべきところ。

「ここじゃ、ないんだね。雪代の家は。」

「それはそうだよ、…またね。」

「だよなぁ…。また来いよ、雪代。」

「わかってるよ。」

「おれ、綴紫達に言ってくる!」

そう言うと流季兄さんが走りだす。


=====


数分後、父さんを除いた全員が集まっている。

「お見送りなんていいのに。」

「よくないわよ、」

「お姉ちゃん帰っちゃうの?」

「早く帰れ。」

可愛い綴紫に対して可愛くない柚紫。
二人の差に笑ってしまう。

「飛鳥君、また来てね。」

「はい、その時はよろしくお願いしますね。お義母さん。」

「ふふ、楽しみにしてるわ。」

「あーっ、ママ浮気ー!」

「浮気じゃないのよ、ただの愛情」

…我が母ながらそれはどうかと思う。
というか娘の旦那に浮気する女はいないと思うよ、綴紫。

「さて、行く?」

「うん」

みなさんは、魔法の絨毯をご存知だろうか?
そう、あの。
杖を一振りあら不思議!絨毯が滑るように出発進行!なアレですよ。
私達の世界ではそれなりに流通していてタクシーなんかもある。
というわけでそれにのって帰ろうとおもう。
魔族の主な移動手段は
徒歩、自転車、自動車、絨毯、箒、それから魔方陣。
自転車も自動車も、人間が使うものと同じ。
ただ、ガソリンではなくて魔力を使うだけ。
絨毯は家紋のついた艶やかなものが多い。
箒。魔法使いの乗るというイメージの強い物。
それらは魔力を消費しなくても済むが魔族にしか運転できない。
それに、雨の日や風の日には正直きつい。
一番多く使うのが魔方陣だろう。
魔力は消費するものの速く、なにより安全だ。

「…あれ、魔方陣使わないの?」

と思うのは可笑しくないはず。

「え?ああ、壊しちゃってさぁ。
 まだ修理してないんだよねー」

しかし、時に壊れる。
魔王なにやってんだというツッコミは既に私がしたからおっけーだ。
手を煩わせて申し訳ない。

絨毯に乗り込み、手を振りながら遠ざかる。

「またねーっ!」

さあ、家に帰らなきゃ。


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