「おきて、おきて、お姉ちゃん、おきて」

「…ん、」

「お姉ちゃん!」

「お、きた…」

「おはよう、お姉ちゃん」

テンシがいます。
え?別に頭が狂ったわけじゃないよ?テンシがいるんだもん。
起きたら妹が起こしに来たらしい。
水色のミディアム、紫色のくりっとした目。真っ白な肌。
名前は…綴紫。
テイシと読むんだけど愛称はテンシ。
これまた可愛いMy sister。

「ママがご飯だって。」

「はーい…」

「もー、シッカリしてよね!お姉ちゃん」

「はーい…」

「話聞いてないでしょ?!」

「はー…ううん?」

アブね。
この子結構…いや、いいか。

「どうしたの?いいから早くっ!」

「はーい」

階段をノロノロと降り、ダイニングへ向かう。
ダイニングに着くと視線が突き刺さる。
まぁ、嫁に行った家族が帰ってきたらそうなるか。

「お久ー」

「いやいやいやいや!」

「いやいやいやいや」

「何?兄さん's」

「何でいんの?!」

「何普通に混ざろうとしてんの?」

「帰省してるだけ」

「あ、そうですかー…」

「って違う!」

「漫才なんかどうでもいいから夕飯は?」

「どうでもいいって言われたぞ、我が同胞よ」

「なぁ、どうするよ?」

「それはもちろん、」

「だよなぁ」

「煩いよ?お兄ちゃん」

「黙ってよ兄さん達」

「はぅ…!妹弟よ…!」

「我々は…お前たちを喜ばそうと…」

「それ迷惑。」

「それは言いすぎなんじゃないかなぁ…柚紫」

「綴紫は黙ってろよな。兄さんたちが煩いのが悪いんだよ」

「確かにそうだけど、」

私によく似た黒髪に、深い灰色の目をした双子の兄達は流季と流雅。
見分けは付きにくいが、微かに流雅兄さんのほうがクールだ。…ほんの微かに。
今の会話でいくと…
(いやいやいやいや!)←流季
(いやいやいやいや)←流雅
(何でいんの?!)←流季
(何普通に混ざろうとしてんの?)←流雅
みたいな、おけ?
深い水色の髪に紫色の切れ長の目。真っ白な肌と、テンシとお揃いの容姿をもつ弟、柚紫。
ユズシと読む。

「いやでもだって!」

「流季煩い」

「流雅?!」

食卓には賑やかな声が広がる。
騒がしさで安心する。
二人だとどうも静かだ。

「そういえば、飛鳥君知ってるの?」

飛鳥君―飛鳥。
それは所謂旦那のことを指している。
魔王には苗字というものがなく、名前で通じる。
それについての説明は、またいつか。

「言ってきた…多分。」

「多分ってお姉ちゃん。」

「もし言ってなかったらどうするんだよ、姉さん。」

「殺されるだけですむと思うけど」

「いやいやいやいや」

「おまえ、何時の間にそんなドライになったんだ?」

コンコン

「…あれ?お客さんかしら。」

そう言いつつ母さんは立ち上がり玄関へと向かう。
その間にも私たちはどうでもいいような話をし出す。


=====


「それでね、璃都ちゃんってばズルって滑っちゃったんだよ!」

「へぇ、そうなんだー。相変わらず璃都ちゃんってドジだね」

「うーん、それは雪代も大して変わらないと思うんだけどな。」

「えー?そんなことないよ。ね、柚紫?」

「そんなことあるから言ってんじゃん。」

「ひどー…え?」

今、旦那の声しなかった?

「旦那…?」

「うん?」

「…??!?!」

後ろをバッと振り向いたらちょういいえがお…!
のだんな…!

「来ちゃった☆」

「来ちゃった☆じゃないよ?!いや、来ちゃった☆かもしれないけどなんで?!」


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