雨に消された言葉





「・・・あ、雨・・・」
「・・・だな」

部活も終わり、その後自主練をしていた松山と小田、そしてそれに付き添っていた美子と町子。
暗くなってきて、部室でしばらく話していると・・・
ぽつ、ぽつと少しずつ屋根に雨粒が落ちる音が聞こえてきた。

「・・・やべえ」

その小田の一言に、一同はドアを開けてみると・・・
既に雨が降り始めていた。

「やばいな・・・置き傘あったっけ?」
「ちょっとまって・・・えっとー・・・」
「町子、ありそう?」
「・・・あー、2本だけ・・・なら。」

2本。
この場にいるのは4人。

「どうしよっか。」
「ならお前ら二人がそれ使えよ。俺たちはいいからさ。」
「ああ、うん。」

松山がそう提案してきた。
小田もそれに頷く。

「でも・・・」

美子は心配そうに二人をみた。
そしてもう一度外を見ると、段々激しくなってきている気がする。

「・・・じゃあ、小田君!私たちは二人で入っていきましょう!」
「・・・え?うわあ!?」

突然町子がそう言うと、小田の手を引っ張った。
そして、耳に顔を近づける。

「ちょっと!先帰るわよ!」
「え?・・ええ?」
「あの二人を二人っきりにするの!」
「・・・ああ!そういうことか!」

こそこそ二人で話し、それで納得したように小田がぽんっと手をついた。

「・・・じゃあ町田、帰るか。」
「え、ちょ・・・っちょっと待って・・・!?」

美子が声を上げると・・・

「だって、私たち帰る方向同じだし、あなたたちもそうでしょ?」

町子がもっともらしいことを言った。

「じゃ、そういうわけでー」
「じゃあなー!」

というと、二人は傘を1本持って部室から出て行った。

残る傘は1本。
お互いにじっとその傘を見て、お互いの顔を見合わせた。

「・・・じゃあ、俺たちはこれで帰るか。」
「・・・え?」
「だって、1本しかねえし・・・言われてみれば帰る方向一緒だしな。」
「・・・うん」

その言葉に、美子は頷いた。
そして、部室を出て傘をさし、帰り道を歩いた。

***

「・・・もうすぐね。夏の大会」
「ああ。まずは全国行きを決めなきゃな。」
「そうね・・・でも、今年もふらのは絶対行けるわ。」
「・・・ならいいんだけどな。」
「私は、皆を信じてる。」

そう言って、少し目を瞑る。
そんな美子の顔を、松山は横目で見る。

そう言われて嬉しく感じ、少し松山の顔が緩んだ。

・・・と、その時。

「・・・!あぶねぇ!!」
「きゃ!?」

そう言うと、松山は美子の手を引き、自分の方に引き寄せた。
その後ろを速いスピードの車が駆け抜けていく。
すると、目の前に水溜まりがあったのか、水がはねて松山に飛びかかった。

松山は美子を庇うために自分の方に引き寄せたのであった。

「・・・ま、松山君!?大丈夫!?」

始めは何事かをドギマギしていたが、その光景をみて驚いて慌ててハンカチで松山の全身を拭こうとした。

「大丈夫だって、しっかし危ねえよなあの車!」
「・・・ありがとう、庇ってくれたんでしょ?」

そういうと、松山は怒ったような顔で美子を見た。

「・・だって、大事なマネージャーを濡らすわけには行かねえだろ?」

「な?」っと言って、にっと笑った。
その瞬間、美子の胸がトクンと音を立てた。

「・・・これじゃ、雨にぬれても濡れなくても変わんねえのな。」

そう言って松山は制服を見る。
見事にびしょびしょになっていた。

「まあ、いっか。」
「よくないわ・・・風邪ひいちゃう・・・」
「大丈夫だって。」

そう言いながら松山は歩き出した。
その横を美子も歩く。

「・・・まあ、藤沢は濡れなかったことだけはよかったよ。」
「私なんかより・・・松山君は大事なキャプテンなんだから。」

「・・・いっつも、無茶するんだから・・・そんな一生懸命なところも・・・好き。」

美子がそう、ポソリと呟く。

「・・・ん?今なんて言った?」
「・・・なんでもない。」

その言葉は、雨に消されて松山には届かなかった。





―――――――――――――――――――
松美でした!
中学生で、まだ付き合う前です!
松山君が無自覚時代!!(笑)
自覚すれば物凄いのに・・・!!






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