愛 | ナノ
 まぶたの裏に眩しさを感じ、シルヴィアは目を開けた。カーテン越しに柔らかい朝の光が差し込み、寝室を照らし出す。隣で眠るセブルスは、こちらに顔を向けていた。シルヴィアはセブルスを見つめ、彼の顔をカーテンのように覆う長い黒髪を、そっとかきあげた(結婚してからシルヴィアがシャンプーしているので、さらさらしている)。土気色の肌に、細長い輪郭、大きな鉤鼻、眉間に刻まれた皺。シルヴィアの手料理をたくさん食べてくれるおかげで、頬は前よりふっくらしてきた。愛しさがこみ上げ、その薄い唇にキスを落とすと、セブルスは目を閉じたままふっと笑った。

「……起きてたの?」

 少し咎めるように見れば、ああ、とセブルスは目を開いて言う。こちらを見る黒い瞳は優しげで、ほんの少し熱を帯びていた。シルヴィアは、彼の感情がこもった目が好きだった。自分にしか見せない、あたたかい眼差し。
 あの戦争から、一年が経とうとしていた。ハリーが皆とマスコミに全てを話したため、セブルスは大々的に取り上げられた。もちろんシルヴィアも、一緒になって語られた。今になってやっと落ち着いてきたくらいだ。二人はしばらく休養をとり、セブルスは皆の強い要望からホグワーツに戻ることに、シルヴィアは学者に辞め専業主婦になった。最初は再び校長になってほしいと言われていたが、正気の沙汰ではないとセブルスは断り、DADAの教師として新学期から教鞭を執ることになっている。

「私、あなたの目が好き」

 鼻と鼻がくっつきそうな距離で、シルヴィアは囁くように言った。

「あなたの大きな鼻も、眉間の皺も、頬も肌も……あなたを形作る全部が好き」

 セブルスは一瞬驚いたように目を見開き、それから言葉を噛みしめ、薄く微笑んだ。

「私も、君の目が好きだ……その澄んだ青をいつまでも見つめていたい。目を縁取る長い睫毛も、整った鼻も、私の名を呼ぶ可愛らしい唇も……君を形成する全て、君の内面全てが好きだ」

 シルヴィアは嬉しく思い、はにかんだ。どちらともなくキスをして、シルヴィアはセブルスの広い胸に頬をすり寄せる。彼の腕の中は、とてもあたたかい。とくん、とくんと彼の心臓が脈打つ音がして、セブルスが生きていることを実感する。
 セブルスも、シルヴィアも、生きている。当たり前のように思えるけれど、とても大切なことだ。

「……私はあなたが大好きで、あなたも私が大好き。こんな幸せなことってないわ」

 そう呟くと、そうだな、と穏やかな声が降ってくる。シルヴィアは少し伸びをして、再びセブルスにキスをした。離れようとすると、頬に手が添えられ、啄ばむように軽くキスされた。リップ音とともに唇が離れ、互いに見つめ合った。黒い瞳には、シルヴィアの姿だけが映っていた。

「シルヴィア……愛している」

「私もよ、セブルス……」

 より強く抱きしめられ、シルヴィアは彼の体温にうっとりと目を閉じた。
 今日は日曜日。少しくらい、ベッドでゆっくり幸せを噛み締めていても、バチは当たらないだろう。


20180614
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