la mer

 夕陽が海を茜色に照らす。
 ピープル島に着いたサンジはすぐさま飛び降り、近くにいた男に声をかけた。

「この辺でクソ可愛い女の子見なかったか? 黒っぽい青の、きれいな長い髪をしてるんだが」

「あァ、さっき見たよ。悪そうな男らと一緒だった」

「どこに行ったかわかるか!?」

「確か……あっちの方に行ったよ」

 どうも、と礼を言い、サンジは男が指差した方へ走る。そこは薄暗い路地だった。






――迂闊だった。
 完全に自分の力を驕っていた。今までやってこれたのは、サンジたちがフォローしてくれていたからだと、ララは今になって気づいた。
 男たちに暗い倉庫に連れていかれ、突然口を押さえられた。抵抗するも男三人の力に勝てず、手足を縛られ床に倒された。最後に目隠しをさせられる。

「お前ら、約束の10万ベリーだ」

 上から三人とは違う男の声がした。

「どうも!」

「嬢ちゃん、見えねェと思うが、この人が嬢ちゃんを『よく知ってる人』だ」

 ケラケラと笑う男たちの声が、倉庫内に反響する。見ることもできず口を縛られたララは、んー!!と声を上げるしかなかった。

「お前はこれから売りに出されるが……まァ、自分の民族くらい知っておいてもいいだろう」

 男の声が響く。

「お前はヒプノ族。目を合わせて願えば催眠をかけられる一族だ」

「!!」

「特徴は深い青の髪に緑の目。ヒプノ族は絶滅したと思われていたが、その生き残りが本当にいたとは……」

 カツン、カツンと近づく足音に、ララは身を震わせた。
 ぐいと髪を掴まれ、顔を上げられる。じっと注がれる視線に、冷や汗が出る。

「売られたお前は一生実験台として生きていくか、道具として使われるしか道はない。かわいそうにな、同情するよ」

 露ほども思っていないような、感情のない声だった。
 突然鼻と口を布で塞がれ、ララは抵抗する。徐々に意識が遠のいていく中、

「……てめェら、女一人に男四人とは腐ってんな」

 聞き覚えのある声がした。

20171223

prev next
back


- ナノ -