la mer

 青い穏やかな海が太陽に照らされ、光を反射する。
 口髭を二つに縛っている男と金髪の少年は、完成したばかりの船を、この光に負けないくらい目を輝かせて見上げていた。

「すげーな、クソジジイ!! これが海上レストランか!!」

 少年――サンジが両手を広げてそう言うと、男――ゼフは後ろで頷いた。

「そうさ、宝全部つぎ込んでも赤字だった。これから忙しくなるぜ!!!」

「大丈夫さ、おれがいるんだ!!」

 以前乗っていた船で料理を勉強し、以前より料理ができるようになった。ウエイターもきっと大丈夫だ。
 サンジは改めて船を見上げた。大きな魚の船首(実は足で漕ぐ兵器になっている)に、側面にはバラティエと書かれている。この名前をつけたのはもちろんゼフだ。
 ここからゼフの夢への第一歩が始まる。わくわくした気持ちで、魚の船首をよく見ようと、船に近づいた時。小さな小舟がそばに浮かんでいるのが見えた。日光を手で遮り目を凝らす。中には同い年くらいの小さな子供が横たわっているようだ。

「……おいジジイ、大変だ!! あの小舟に子供が倒れてる……!」

 慌てて報告すると、ゼフも同じく目を凝らした。そしてゼフはすぐさま波止場のギリギリまで近付き、置いてあったロープの端に大きめの石をくくりつけると、小舟の中へ投げた。石は狙い済ましたように舟に引っ掛かり、ゼフはそのままロープを引いた。
 小舟の中には少女が倒れていた。服は海水で濡れ、ぐったりとしている。少女から散らばる深い青の髪が印象的だった。ゼフが息をしているか確かめ、サンジに言った。

「弱いが息をしている……! サンジ、風呂を沸かしてこい!!」

「あァ!!」

 バラティエに入り、2階にある風呂の湯船の栓をひねる。少女を抱きかかえてきたゼフによって風呂場から出され、サンジは少女の着替える服を用意しに船を降りた。
(大丈夫かな……)
 少女の肌は青白く、死んでいるように見えた……でも、ゼフが何とかしてくれるだろう。彼と一緒にいてまだ日は浅いが、サンジはゼフに信頼を寄せていた。

20171218
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