06




「わーここが海軍の船なんですね!」


甲板に立った私は更に興味を持った様子で言った。
海軍の男も少し誇らしげに鼻をならした。


「勝手に物を触らなければ好きに見て良いぞ、おれは甲板で見張りをしておかなければならないからな」

「勝手に見ても良いんですか?」

「ああ、大佐室以外はな」


これはまたとないチャンス。


「ちなみに今海賊が捕らえられてるとかないですよね?」

「ああ、昨日まではとある海賊が捕らえられていたんだが、自分で海に飛び込んで、おそらく死んでしまったよ」


彼の事だ。と言う事はここに鍵がある筈だ。


「そうなんですね」


私はにこりと笑って中へ入った。
さて、鍵がありそうな場所は……。探り探り色々な部屋を回った。食堂や寝床、書庫、物置の様な部屋、そして留置所というのだろうか、牢屋のある部屋。
入ると、なんとまあ解りやすく牢屋の向かいに鍵が掛けてあった。
私はそれを取ってパンツのポケットの中に入れると部屋を後にした。
甲板に戻った私は海軍の男に「ありがとうございました、おかげで夢が一つ叶った様です!」とお礼を言って海軍の船を降りた。男は何故か照れ臭そうにしていた。
私は町外れから自宅へと走った。まだ交戦中の様でわーわーと耳に入ってきた。
私は自宅に着くとばたんと強く扉を開けた。膝に手をついてはあはあと息を切らした。
ベッド際で座っていた彼は驚いた様子でこちらを見た。


「……ただいま……あったよ、鍵」


私はそう言うとポケットから鍵を取り出した。


「……本当か」


彼は半信半疑な様子で答えた。


「多分ね。とりあえずやってみましょ」


私が彼に近付くと彼は手錠の掛けられた腕をこちらに差し出した。
緊張の一瞬。鍵が違うものだったらどうしよう。
私は鍵穴に鍵をそっと差した。型があっていた様ですっとそれは奥までささった。
それを回すと、彼の手錠は、外れた。


「……良かった。もう片方も外すね」


私は左手にも同じ動作をして手錠を外した。


彼の手は、やっと自由になった。
彼は無表情でその自由になった腕を閉じたり開いたりを繰り返した。
その間にみるみると彼の顔色も良くなっていった。


「これで助かったね」

「……ああ、助かった」


彼は何だか難しい顔をしていた。


「だが、どうやって」

「あなたが乗せられていた海軍の船に忍び込んだの」

「……危ない目には遭わなかったか」

「全然。大丈夫だったよ」

「そうか、そりゃ良かった」


彼は自由になった右手で私の傷だらけの左手を包んだ。その右手はとても暖かかった。
その暖かさでどくどくと心臓の音が早くなる。




「お前のおかげで助かった。感謝している」







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