※54



イヴがローを連れてきたのは、仄かに薬品の香りが漂う場所だった。
消して広くはない、無機質な打ち付けのコンクリートの壁に薬品棚とベッドが一つ。治療中のイヴが使っていた処置室とはまた別の、予備の処置室として利用している部屋だった。

イヴは扉を閉めるやいなや、絡み付くようにローの首に手を回した。


「我慢できないの」


イヴはそう言って一度軽くキスをして、すぐに深いものに変えた。


「ふっ……んんっ」


ローがそれを拒否するはずもなく、イヴの艶かしく動く舌に、自分の舌を絡めた。
イヴはキスを続けながら右手を下にやり、ローの穿いているジーンズの上からローのものに触れた。


「いつになく大胆だな」

「だめ?」


イヴが色っぽく上目遣いで言った。


「駄目な訳ねェだろ」


今度はローがイヴの手を引いて、部屋の隅に置かれたベッドへ行った。イヴがベッドに座ると、部屋をぐるりと見渡してくすっと笑った。


「ここでするなんて、何だかいけないことしてる気分」


イヴが抱いて、と言いたげにローに向かって両手を広げた。


「トラファルガー先生……っ」

「何だそれは」

「連れないわねぇ。私はこんなにもトラファルガー先生を想っているのに……!」


イヴが演技がかった声で言うと、困った顔をしていたローが表情を一変させてイヴと同じように演技っぽくにやり、と笑った。


「白衣でも着てりゃ良かったか」

「それも素敵」


イヴが着ている繋ぎのファスナーを下ろして、下着を露わにさせた。


「せんせい、抱いてください」


いつもとは違うアプローチをするイヴにローはどう攻めようか、と顎髭を撫でて思案した。


「すぐ抱くのは勿体ねェな」

「私、我慢できない……」

「悪い子だな。繋ぎを脱いで脚を開け」


ローの言うとおりにイヴはローの前で繋ぎを脱いでベッドの柵に掛けると、脚を開いた。


「我慢できねェなら自分でしてみろ」

「えっ……!?」


イヴは素の声で驚いた。


「ほら、シたいんだろ」


イヴは「うー」と恥ずかしそうに唸りながら左手で口元を隠して、おずおずと右手を下半身に伸ばし、自身の下着の中に手を入れた。


「んっ……」


ローは膝を曲げて腰を落とすと、イヴの股の間に顔を近付けた。イヴは入れかけた指を止めて首を横に小さく振った。


「流石に恥ずかしいわ……」

「続けろ」

「ローの意地悪」

「先生、じゃねェのか?」


ローはからかうように笑って言った。


「ほら続けろ。続けねェと、今日はお預けだな」


ローの言葉にイヴは「だめ」と素早く返した。自分の欲に観念したイヴが再び下着の中に手を入れて、慰めだした。


「んっ……んっ……」


ローの顔の前でくちゅくちゅと淫らな音がして、見上げるとイヴが切なそうな顔で喘いでいた。


「はぁっ……トラファルガー……せんせ……いっ……、すき……っ……んんっ……!」


イヴの指の動きは徐々に速くなり、それに伴ってショーツの沁みも広がっていった。


「んっ、んんっ……せんせ、せんせい……っ、欲しい……っ」


自ら慰めながら息を荒げて欲しがるイヴにローも興奮が抑えられなくなりつつあった。ローは股のイヴの自慰を見ながら、自身の服を脱ぎ捨てた。


「あっ、イきそう……っ!」


絶頂に向かって激しく指を動かしているイヴの手首を、ローが掴んで引き抜いた。


「勝手にイくんじゃねェよ」


イヴはローの言動に驚きながらも、更に切なそうに、悩ましげにローを見つめた。
ローはイヴのショーツを脱がすと、本能のままにイヴを押し倒し脚を広げた。
既にそそり勃ったそれは、一気にイヴの奥に押し込まれた。


「あ、あぁっ!」


イヴが叫び声に近い声を出して、腰をびくつかせた。
イヴが既に絶頂を迎えたのも気に掛けずにローはずんずんと奥を突きだした。


「あっ、あぁあっ!またイくっ!いやぁっ!」


酒で感じやすくなったイヴの身体は、何度も腰をびくんと跳ねさせて、その度絶頂を感じた。


「すげェ……っ、イヴ、何度もイっていやらしいな……っ」

「あ、あっ!あっ……いや、ぁああっ!」

「またイったか……っ」

「いやっ、だめ……っ!激し……すぎ……っ!」


イヴはローの手首を掴んで優しくするように求めるが、ローにとってはそれは逆効果だった。
ローは動きを緩めずに、悪戯をしているかのように笑みを浮かべた。


「だめ、だめ……っ!あぁっ!また……っ!これ以上はほんとに……っ!壊れちゃう……っ!」

「壊れても構わねェよ……っ」

「あっ、あっ……!」


イヴは意識がどこかに飛んでいってしまいそうになる感覚に襲われて、細く遠くを見るような眼差しになった。


「あ……っ、ああっ……」


変わらず激しく奥を突かれているが、身体の反応や喘ぐ声に勢いが無くなった。


「もう余裕がねェみてェだな、出すぞ……っ!」

「……っ!」


ローがイヴの奥で果てた。その後見たイヴは今までローが見たなかで一番蕩けた顔をしていた。






「イヴ、戻るぞ。おい、イヴ」

事後の処理が終わったローがイヴに声をかけたが、イヴからの返事はなく、代わりに聞こえてくるのはイヴのちいさな寝息だった。

ローはイヴの服を整えたが、起きる気配はない。ローはイき疲れたイヴを抱えて、船長室へと戻った。




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