※35
「行きたい所はあるか」
ソファーに腰掛け本を開くローが、隣でローに肩を寄せて新聞を読んでいるイヴに声を掛けた。
「デートのお誘い?」
イヴが右斜め上のローの顔を見ると、自然にイヴの頭がローの左肩に乗った。
「まあ、そんな所だ」
「洋服を買いに行きたいわ。それと、酒場」
「分かった」
ローは本から目を逸らさず返事をした。
「と言っても、無一文なのよね。帰ったら返すから、お金貸してくれない?」
「貸さねェよ」
「あら、意外とケチね」
「返す必要はねェ。いくらでも好きに使え」
「それじゃあ、身体で返したら良いかしら?」
イヴは読みかけの新聞を脇に置くと、ローの太股を撫で、艶っぽく笑って見せた。
ローも本を閉じテーブルに置くとイヴの肩を抱き目を合わせ、イヴと同じ様に色気を漂わせた笑みを作った。
「……ああ、そうだな。一生をかけてな」
「喜んで」
どちらともなく数回口付け、抱き合った。
「今日はどう責めようか」
ローはそのままイヴの身体を軽々と抱き上げ立ち上がり、ベッドへ向かった。
部屋の時計は昼前を指しているが、海中に潜っている為光は届いて来ず、天井の照明が部屋を照らしていた。
「どんなのが好き?」
ベッドの上に優しく寝かされたイヴが訊ねる。
「そうだな……お前が壊れるくらい、激しいやつ」
イヴに覆い被さったローが悪戯っぽく笑った。
「嫌よ」
イヴが小さく頬を膨らませる。
「お前は感じた素振りをようがどこか余裕を見せている。余裕の無い顔が見たい」
「いつだって余裕なんて無いわ」
「嘘を吐くな」
「本当よ……ん、んっ」
ローから深いキスが降ってきた。
イヴの身体を撫でながら角度を変え口内を激しく犯した。
「んんっ」
ローはキスを続けながらイヴの着ていたパーカーのジッパーを下げて、上半身をあらわにした。
「電気、消して」
「消したら顔が見えねェだろ」
「恥ずかしいじゃない」
「それが良いんじゃねェか……綺麗な身体してる」
「……それ、いつかペンギンにも言われたわ」
「あ?」
ローが表情を一変させ眉間に皺を寄せた。
「お世辞でね」
「気に入らねェな」
「その時のあなたは私に興味がなかったくせに」
「お前もそうだろ」
「ええ、私はエースを愛していたもの」
挑発的な口調でイヴが言うと、その口を塞ぐように再びローが口内を犯した。
「ん……んんっ」
唇を離すと、イヴがローの頭をくしゃっと乱した。
「私も嫉妬してるの、知ってる?」
手を頭から頬に滑らせて訊ねた。
「どういう事だ?」
「顔も名前も知らない誰かによ。もしかしたらあなたも覚えていないのかもね」
「……ああ、そう言う事か」
イヴの言葉で一夜限りの買った女の事だとローも理解した。
「欲張りで、我儘でしょ」
「お互い様だな」
ローはイヴを裸にし身体を隅々まで愛すると、身に付けているものを全て投げ捨てた。
イヴの背中に手を差し込み起き上がらせた。
イヴは胡座をかいたローの太股の上に乗り、首の後ろに手を回すと、ローもそれに応えて抱き合った。
「……実は憧れだったの、向き合って、抱き合って愛し合うの」
「した事ねェか」
「ローはあるの?」
「こんなに綺麗で愛しい女とは、ねェな」
「あるんじゃない」
「イヴ」
「なに?」
「余計な事は考えるな。ただおれの事だけ考えてろ」
「素敵。ロー、好きよ」
イヴが腰を浮かせあてがうと、ゆっくりと沈めた。
「ん……あっ、ああ……っ!」
限界まで沈め、一番奥にローのモノが当たった。
「ぜ、んぶ、入った……?」
とろんとした顔で、先程より高く甘い声を出すイヴ。
「……っ、ああ」
「ローの、すごい……っ、おくまで……っ」
「好きに動け」
抱き合いながらお互いの欲に任せて腰を動かすと、イヴの甘い声が部屋に響いた。
「ぁあっ、あっ!あっ、ロー……っ!イく……っ!」
「はぁっ、はぁ……っ」
「あぁっ!」と言う声と共にイヴの身体がびくっ、と反応した。
「はぁっ……ローの上でイっちゃった……」
ローは崩れた笑顔でそう言うイヴがこの上なく愛しく感じて、挿入したまま押し倒した。
「……やめて、と言っても聞かねェ」
「はぁ……っ、ローになら、何されても、いい……っ」
イヴの身体も、中も既に熱くなっていて、イヴは『ローが欲しい』、それだけしか頭に無かった。
それはローも同じで、ローは今までになく激しく膣内を掻き乱した。
「あぁっ!はげ……し……っ!やぁ……っ!」
イヴの声が徐々に大きくなっていく。
ローの腰の動きは、イヴの一番感じる部分を的確に突き、一段と勢いを増していった。
「ぁああっ!だめ、そこ……っ!それいじょ、う……っ!やっ、ぁあっ!だめ、だめ……っ!」
「はぁっ……、やめてと言っても、聞かねェと言ったろ……っ」
「ロ……ォっ!あっ……ぁあっ!また、イ……くっ!」
二度目の絶頂を迎えたイヴが、必死に首を横に振った。
「ほんとに……っ、もうだめなの………っ!おかしく、なりそう……」
「余裕ねェ顔してる。その顔が見たかった」
再びローが腰を動かし、更にイヴを犯す。
溶けてしまいそうな初めての感覚にイヴは何度も身体をびくつかせ、意識をなくしてしまいそうになった。
「あ、あぁ……っ」
「はぁっ、まだ犯してやりてェが、限界だ……っ」
虚ろな意識のなかで、ローが絶頂を迎えるのを感じた。
イヴは、そのまま目を閉じぐったりとその場で力尽きるように眠りに落ちた。
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