冷気が肌を刺すように痛い。足に力が入らない。前が見えない。暗い、森だ。足を引きずり、もう歩くこともできない仲間を背負い進む。隣を行く彼も似たようなものだ。弓は血で滑り、途中で落とした。
0組を最強だと言う人もいるが、別に本当に魔人というわけではない。ただ死んでも生き返るというだけで、怪我もするし命を落とすことだったある。そう、ただ欠員が出ないだけ。あとはジャマーが効かないということくらいか。

皆は明日も生きていられるのだろうか。私は今日もこの痛みに耐えれるのだろうか。
死という苦しみを何度味わえば、私達は解放されるのだろう。何もかもを知っている気になってた。こればかりは、永遠に知ることができないように思える。
迷いの森。出口のない闇。空も光も救いもない。雨は刀剣のように、風は弾丸のように、切り裂き撃ち抜く無慈悲な森。

ばたり

隣を歩いていたはずの誰かか倒れた。あと何人残っている?
マザーを責めるつもりなんて毛頭ない。あの人はマザーだから、私達が責めることなんてできない。子供は母親に逆らわない。
彼女のおかげで、私達は死なない。
(彼女のせいで私達は死ねない)

「     」

背負ってた人が何かを言った。彼女の腕が、力なく肩から落ちる。また、誰かを忘れた。死んでも死ねないのは、生きていると言えるのですか。背中に伝わる彼女の冷たさは、冷えた私の手は、生きていると言えるのですか。

――死と生は共にあるべきもの。片方無くしては、他方は有り得ぬ。貴様のその手は、両方を掴んでおるか?冷えきったその手は、愛もぬくもりも証も持てぬであろう。まして生や死なんて尚更。
――貴様は生きておるのか?

森が静かに嗤う。
ぐるりと世界が反転した。

目が覚める、あれは夢だ。ここは自室。自分のベッドの上、森ではない。はっ、はっ、と短い呼吸を繰り返す。今日も0組は全員揃っている。13人を、思い出すことができる、大丈夫。起き上がり、息を整えようとしてみる。大丈夫だと言い聞かせても不安定な呼吸。戻りそうもない。
枕元の時計を見ると、もう夕暮れが近いことが解る。確か今日は休みだ。だからこの時間まで眠っていた。窓を叩く風がうるさい。嵐だ。うなされていたのか、汗で身体が冷える。寒い。凍えるように、寒い。
外で降り続く雨が、木々を揺らす風が、私をあの悪夢へ引き戻す。私は、生きているのですか。誰かそれを証明できるのですか。何度苦しめばいいのですか。

寒い。
膝を抱えても、冷えた身体はぬくもりを生まない。
どうか私に、愛を、熱を、生きているという証を、どうか、どうか、どうか、どうか、どうか、どうか、どうか、どうか、どうか、どうか、どうか、どうか、
心臓が壊れるほどの抱擁を、誰か。


▲ 渇望


last phrase by 不在証明


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