揺れる揺れる。地面がぐらり。思わずよろけてしまって、危うく倒れそうだったのを堪える。
酷い揺れだ。エレンはうずくまった。友人達は彼の前を歩いている。うつむいていて彼の様子に気が付いていない。頭が割れてしまいそうに、ぐらり。

ああ、吐きそうだ。

冷や汗を流しながら、顔を少し上げ辺りを伺った。ぐるぐる揺れる地面に立っていないのはひとりで、誰も、誰も彼に気付かない。大地など揺れてはいないのだ。
エレンだけが今、この瞬間だけ隔離された。そう思えるほどに人々は彼に無関心だった。

誰かが遠くで笑い声を上げる。どこかの窓から酒の臭いがする。騒ぐ音がする。噎せ返る平穏の温度に吐き気。

「(人が死んだのに人が死んだのに母が喰われたのに!)」

歩く先にあるという開拓地でも同じ空気を味わうのだろうか。また地面が揺れる。ぐにゃり、すでに崩れかけた世界がまた歪んだ。


▲ 平穏
狂ってる


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