五条に振り回される

※高専時代


「今日やる気なくね?」
「この後硝子とお茶する約束してるから省エネモードなの」
「皺寄せ俺に来てんだけど」

ぶつくさ言いながらも悟は順調に呪霊を祓っていく。本来なら悟一人で事足りる任務だ。それなのにわざわざわたしを付け足したのは担任が暗に示す指示を汲み取らざるを得ない。夏を過ぎたあたりから悟はおかしい。

「いいよなあ。お前らいつも二人じゃん」
「悟も来る? 硝子、年上の彼氏できたらしいよ。一緒にガールズトークしよ」
「舌が腐り落ちるわ」

呪具を扱いながら携帯を開いて写真を見せると、悟がウゲッと慄いた。
まったくどこで撮ったのやら、おそらく進学先である医大関係の頭の良さそうな男を捕まえて、自分はキャミソール一枚で煙草をふかす硝子がツーショットを送りつけてきたのだ。

「しばらく会わないうちに趣味悪くなってんな」
「なんか硝子一人だけ大人になったよねえ。わたし達なんて相変わらず呪霊の相手しかしてないのに」
「どうせその男も一緒に来るんだろ」
「知らない。来るかもね……あ。」

珍しく悟の手が呪霊をすり抜けた。脱兎の如く逃げ出した異形の影と隣に立つ同級生を、わたしは交互に恨めしく睨む。

「ちょっと何してんの。今祓えたでしょ」
「ざーんねん。あいつ強くね? 特級だよ特級」
「どう考えても二級かそこらじゃん」

早くも省エネから通常に切り替えなければならない状況にわたしは溜め息をつく。取り逃したまま任務を切り上げるほど無責任なつもりはない。

「硝子との約束間に合わない……」
「今日は諦めるしかねえな。お前は硝子と男囲むよりひいひい言いながら俺と呪い相手にしてるほうがお似合いだよ」
「……悟、あんたもしかしてわざと取り逃した?」
「んなわけ」

人差し指の先で収束していく無下限術式が蒼く光を放っている。明らかに余裕を持った態度で、逃げおおせる呪霊の背中に術式を行使することなど悟にとって取るに足らなかったはずだ。

「あいつ祓ったら高専戻って伊地知に焼肉奢らせようぜ」
「後輩にたかるなよ……それにわたし硝子と遊びに行きたいんだって、ねえ聞いてる?」
「あー、はいはい。聞こえねえ」



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