新世界よりパロ2

新世界よりのネタバレ注意
いろいろひどい
なんでもオッケー!な方のみどうぞ



呪力が人類頂点レベルに達している俺には許されていることがある。
つまるところ倫理委員会からの情報開示だ。人間による呪力の完璧なコントロールは不可能であること。漏出した呪力の行き先、それら負の効能。
この世に生まれたガキは18になるまで人権がないこと。危険分子は早めに摘まれるし、排除を決定した大人に罪はない。
……とかなんとか、そういう、一般的な学生だと知り得ない情報を手にしている。
理由はそう、俺が最強だから。

俺の将来にまともな倫理の道は用意されていない。
これは勘だ。たぶん当たる。




校舎内の階段を降りてきた女と視線があう。
「あ、」女は五条を視認して小さく手をあげた。僅かに首が傾き、肩にかかった茶髪がさらりと揺れた。
いつもは一つ結びにしていることが多い、のに。めずらしい、と思うより前に、五条の目はサングラス越しに皮膚に咲いた小さな花を見つけたのだった。

「さとるー。硝子どこにいるか知らない?」
「……知らね」

軽快にとんとんと段差を駆け降りたナオは、小走り気味にぱたぱたと五条の隣に並んだ。
硝子の居場所なんて俺よりお前のが詳しいだろ。いつも一緒にいるくせに。内心思うが口にはしない。

「放課後カフェいこって約束してたのに連絡つかなくってさ」
「はは。振られてやんの」
「ちっ、違う」

五条を見上げたナオの目元がぱっと赤くなる。ナオと硝子が恋愛関係にあることは知っていた。いつからなんて知らないが、同級生だし、付き合いは長いはずだ。っつーのにこの反応。ウブか。

「何照れてんだよ。処女じゃねーくせに」

指摘するとさらに頬が赤くなった。立ち止まって俯いてしまったので、面倒くさくなった五条はさっさと歩き出した。
俯いた拍子にナオの後ろ髪が鎖骨に垂れ、首筋から覗いた無数の鬱血痕が嫌でも五条の視界に入る。ナオは無自覚だろうが、だからこそムカつく。あんなもん見たくない。

「待ってよ、悟」
「うるせぇついて来るなビッチ」

覚えのない罵詈に、さすがにカチンと来たらしく、背後からナオの噛みつくような声が聞こえてきた。

「さっ、悟だってそうでしょー?!」
「俺? 俺は処女だぜー。後ろはな」

振り返ってケラケラ笑ってみせると、ナオは先ほどとはまた違った意味で顔全体を真っ赤にして拳を震わせていた。あれで怒っているのだ。全然怖くないが。

「バカッ。あんたに言い寄ってる男共に言いふらしてやる」
「ご自由にぃ」

そんなことされても痛くも痒くもない。五条は両腕を広げて揶揄を滲ませた。
ナオと硝子が女同士でくっついるように、現代では男同士でやり合う奴らも多い。というかほとんどの学生がそうだ。なぜなら倫理委員会がそう仕向けているから。
当の本人たちには、同性との性的接触がなぜ推奨されているのか、どんな意味を持つのか、何も明かされていないし、きっと疑問を持つこともないだろう。倫理委員会が仕向けているのは行為自体はもちろん、学生の思考回路にさえ及んでいる。
だから年頃になると当然のように同性に恋愛感情を向けるし、当たり前の流れで同性同士でセックスをする。

なんにもしらない。
学生たちは、みんな。ナオも硝子も、夏油も。
猿みたいにセックスに溺れる同級生たちが、たまに、自分とは別の生き物に見える。

「悟ってモテるくせに全然恋人作らないよね」

ぷりぷりと怒りながらもナオは五条に追いつこうと走り寄ってくる。五条は黙ってそれを待った。
再び肩を並べると目的地を伝え合うこともなく共に歩き出した。
別に俺は用事もないからいいんだけど。こいつ硝子のこと探してたんじゃなかったっけ。まあ、いっか。

「作らなくても困んねーし」
「モテるとこは否定しないわけ?」
「引く手数多なんですう」

語尾を伸ばすとナオがげんなりした表情を浮かべた。

「そういうお前は硝子一筋だもんな。振られちゃってざまぁねぇー。後釜どうすんの?」
「振られてないし」

一途な同級生は五条の冷やかしにも律儀に返す。
だろうな。知ってる。ナオの首筋に痕をつけた女の影が脳裏にちらついた。五条に対してあっかんべと舌を出す様子も。
硝子は五条がナオのことを好きなんじゃないかと疑ってる。濡れ衣も甚だしいが、それにかこつかて度々こういった『見せつけ』を突きつけてくるのだ。
もう一度言うが、ナオは無自覚だ。だってこいつ馬鹿だし鈍いし。

「……ビッチじゃない。わたし、硝子以外に知らないもん」
「へえへえ」
「ほ、ほんとだから」
「あっそ」

ナオはなぜか五条の制服の裾を握ると、消え入りそうな声で、しかし言い聞かせるようにゆっくりと口にした。
こいつのこういうところ。ほんとめんどくさい。
自覚がないのは知っている。知っているが、この際棚にあげてしまえ。首にキスマークつけといて何言ってんだ、この女は。
お前は倫理委員会の目論見通り、正しく生きて、猫に摘まれることなく大人になりゃいいんだ。

「わーかったから離せ。くっつくな暑い」
「暑っ……くない! 今冬じゃん!」
「あ、気温じゃなくてお前が暑苦しいって意味ね。伝わんなかったね。わりわり」

言葉を詰まらせたナオがバカスカ肩を叩いてくる。だから怖くねーんだって。
ナオは必死の形相で五条の顔に手を伸ばした。

「今日こそその高っかいグラサン割ってやる! 貸せばかっ」
「これ? ダメ。お気にだから」
「ここぞとばかりに身長生かすな!」

五条は素早くサングラスを手に取り、頭の上に持ち上げて避難させる。この勢いだと本当に破壊されかねない。
高いところにある景品を取ろうとするみたいに、ナオは五条のサングラスに向けてぴょんぴょんと飛び跳ねる。
その様子を、反対側から歩いてきた硝子が呆れた様子で眺めた。

「あんたたち、なにイチャついてんの」

五条と、五条の腕にしがみついたナオが、同時に硝子を振り返る。

「イチャついてねえ!」
「イチャついてない!」



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