悠仁と眠るだけ

おやすみなさい、の科白が好きだ。
言葉の響きが好きだ。一言を交わしてから眠るまでの夢見心地な時間が好きだ。夜の挨拶は、たったそれだけで1日の終わりを特別なものにする。
というのは方便で、実は、とろとろと眠りにつく悠仁の寝顔が好きなだけかもしれない。

「……そんなに見られたら眠れないんだけど」

同じベッド、同じ毛布。手を伸ばせばすぐ触れられる距離で、悠仁から苦情が届いた。
最近は朝晩がずいぶんと冷え込むようになった。悠仁はそんなに寒がりって訳じゃないみたいで、本格的に訪れる冬を前に少しずつ衣替えをしている。
布団から肩を出して眠る悠仁を、一方でわたしは布団に潜り込んでその寝顔を眺める。手足が冷えるので微弱に伝わる悠仁の体温がありがたい。
おやすみ、と口にしてすぐ寝落ちしかけている悠仁は、だけどわたしへの苦情願いのために頑張って目蓋を開こうとする。彼の睫毛がふるりと揺れるのがわかった。

「だって可愛いんだもん」
「かわいくはない……」

否定する悠仁は寝惚け眼で舌ったらずだ。眠たいのとわたしから視線との間で意識がうつらうつらと揺れている様子が見てとれる。
むにゃむにゃとまだ何か言ってる悠仁の前髪を撫でた。

「おやすみ、ゆーじ。大好きだよ」
「ん……」

おれも、と消え入りそうな声が聞こえた。整髪料もなにもつけていない髪の毛が指の間を流れていく。心地のいい感触、体温、時間、すべてに身体が満たされる。
おやすみなさい。



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