完結
 教室にいるよりも、学校の友達といるよりもサッカーをしている時の方が楽しそうに見えた。名前も知らない男の子たちと楽しそうにボールを追っかける姿は、彼に好意を抱いている女の子たちが言うクールだとか大人びているとかそういう言葉とは少し違うように思えた。
 教室で読書をしていたり、勉強をしている姿は確かにかっこいい。女の子たちがきゃーきゃー言うのも納得する。けれども私にはサッカーをしてあつくなってる郭くんの方がちゃんとした同じ歳の男の子のように思えて、好きだと思った。


 休日に、初めてサッカーをしている郭くんを見てから一年が経った。最初はどうして部活に入らないのだろうと思っていたけれど郭くんはとてもサッカーが上手いから、もっと別な場所で、同じようにサッカーが上手い子と練習しているのだと知った。私はあまりサッカーに詳しくないけれど、もしかしたらサッカーが好きな人は郭くんがどれだけすごいのかよく知っているかもしれない。

 一年生、二年生と同じクラスになれたのに私は郭くんとはあまり仲良くなれていない。教室にいる郭くんはとても大人っぽくて静かだ。勉強も出来てスポーツもできるすごい人。同じクラスの同じ歳の男の子のはずなのに、郭くんが一人で下校している姿を見た時に彼がとても遠い存在のように思えた。挨拶する時や会話の中でも彼の笑った顔を見たことはなかった。最初、特に中学に入学したての頃は彼がロボットのように思えた。


 部活が始まる前、忘れ物をしたことを思い出して教室へ戻る。もう既に教室内は無人で窓の外から下校する生徒の声やこれから部活を始める生徒の声が聞える。
 今日最後に席替えをしたため、机を間違えないように確認して忘れ物であるプリントを探す。

 あれ、こんなもの入れたっけ。

 目当てのプリントと一緒に封筒が私の机から出てきた。宛名も差出人の名前も書いていない封筒を開ける。廊下に足音がしたのを聞きながら、封筒の中に入っている便せんを読む。

「郭くん、好きです。つきあってください……」

 開けっぱなしにしていた教室のドアから教室に入ってきた、誰か。
 それは驚いた顔をというよりも少し不機嫌そうな顔をした、郭くんだった。

20140218
20160928再修正

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