愛ユエに

ああ、鬱陶しい


今日も排除しなくては


スベテは



我が主の為に…………







『邪魔物』『邪魔物』『邪魔物』『邪魔物』

四方八方に、主の行く手を阻む者供


嗚呼、下らん

そんな『邪魔物』、主の目についたら支障が出る


故に私は

静かに

主を守る

主の知らぬ間に

漆黒の扇子を取り上げ、











「司馬懿?さあ、俺は知らないが…」

かれこれ1時間、曹丕は宮殿内を歩き回って司馬懿を探していた。
朝、扇子を片手に歩く司馬懿とすれ違って以来、一度も彼を見ていないのだ。

夏候惇から情報を聞き出すも、結局は振り出しに戻ってしまった。

「ああ…孟徳なら知っているかもな」

「父が…?」

顎に手を沿え髭を撫でながら呟く夏候惇。
曹丕はすぐさま自分の父の元へ向かった。


「司馬懿…宮殿内にいないなら、庭を回ってみてはどうだ?」

やはり曹操も知らないと言う。
仕方なく曹丕は多少の苛立ちを覚えつつ、庭へと移動した。



しばらく庭を周り司馬懿を探していると、曹丕は扇子を片手に立ち尽くしている人物を見かけた。

思わずため息を吐き、ゆっくり歩んで近付く。





………ふと、曹丕は歩みを止めた。

生臭く、鼻につく鉄の臭い。
司馬懿の足元に横たわる「ヒト」。
たまらず曹丕は鼻を押さえ、込み上げる胃液を飲み込む。

喉が焼けてイタイ。
じわりと目尻に涙がたまり、視界がぼやける。


「…………、あ……」


口から零れた声はなんとも情けなく、
その声に気付いた司馬懿はゆっくり振り返った。













血に塗れた顔、扇子、服。

どす黒い悪魔の色を体に浴びて、クスリと司馬懿は笑った。

「おや…これはこれは曹丕様…どうされましたか…?」

口元に当てていた手を下ろし、ごくりと生唾を呑んでから、掠れ声で曹丕は尋ねた。

「これは…一体…?」

その質問はまるで予想していたといわんばかりに司馬懿は口を三日月にして笑い、さも当たり前のように、得意げに答えた。

「見て分かる通り、前々から曹丕様に反感を持っていた部下を、私めが消させていただいただけです…」

お見苦しい物を見せてしまいましたね、申し訳ございませんと言ってはペこりと小さく礼をした。

外見とは似つかわぬその言葉に、曹丕はただ呆然と司馬懿を見つめた。


「…さ、帰りましょう?」


扇子を口元にあて、目を細めて曹丕を見て司馬懿はそう呟いた。


…一体……何なんだ…

本当に

司馬仲達なのか…?


ぐるぐると訳のわからない考えに捕われつつ、曹丕は震える唇をゆっくりと動かした。

「仲達………お前は……」

その言葉を遮るようにして、司馬懿は喋り出した。

「曹丕様。あなたは何も知らなくて良いのです」


……あなたは…只、前だけを見据えていて下さい。

邪魔物は全てこの司馬仲達が…
アナタのためだけに排除しますから………




例え、邪魔物が身内だとしても…




嗅ぎ慣れぬ鉄の臭いと腐臭と耳にこびりついた高笑いが

曹丕の体を駆け巡った。







ワタシはアナタの忠実なシモベですから








※まさにやおい(^o^)
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