「日比野!今日の放課後空いてるー?」
「あ?無理。」
「ガーン!」
「(ガーンって口に出す奴初めて見た…)」

サンタクロースはやってこない

「何だよ日比野のバカヤロー!ハクジョウモノ!」

神崎は俺に缶ペンを投げつけた。
それを避ける俺。
神崎の缶ペンが弾ける音。

「あ"ーあ"あ!」

悲劇の声を発している神崎。
あーもう、うるさい。

「何?何でそんなに行きたいわけ?(こちとら帰って新作RPGを進めたいんだよ。)」
「だって明日クリスマスじゃ〜ん!しかも!終業式だから澤さんに会えるだろ?」
「……で?」

だからなんだと言うのだ…早く用件を言えコラ。
ここまで言って分からないのか、日比野の馬鹿!!と叫ばれる俺。
不本意。
この態度、人に物を頼む態度じゃないよな?

「クリスマスプレゼントをあげたいんだよ、澤さんに!」

大きな声で叫ぶ神崎。
教室に残って勉強しているクラスメイト達が怪訝そうな目で俺らを見る。

「あーうるさい。皆見てるから、落ちつけ馬鹿。」

そういうといきなりしょぼんとなって、

「あぁ、俺のが馬鹿だよ…」

と言って俯きだした。ああ、もうめんどくせぇな。

「分かったよ。付き合うから、その買い物。」

結局俺が折れた。
まぁ、この阿呆には『諦める』という能がないから、仕方ない。


街に出かけると、とりあえずゲーム機売り場へ行った。
いきなりなぜだ?と思う方もいると思うが、俺と神崎は極度のゲーマーなのでデパートに行くと真っ先にゲーム売り場で語り合ったり、新作が出てないか見たりする。
30分くらいゲームについて語ってから、買い物に入ろうとしたのだが…。

「あ、日比野!ゲーセンあるぜ!!寄ろー」

……お前な。
買い物しないのかよ。
頼んだのはお前だぞ?
どうして買い物しようとしないんだよ馬鹿か。

「おー」

まぁ、買い物は正直面倒だから、俺はゲーセンに寄ることに同意。
俺らは格ゲーコーナーにきた。

「格ゲーやっる〜」
「ん、俺もここら辺でやるわ」

と言って50円の両替に行く。
………ゲームを始めて数分後。

「ああ!澤さんに!プレゼント!買わなきゃだったー!!」

気付くのおっせ。

嫌がる俺を引っ張って神崎が連れてきた場所は、

「え、ここ?」
「おうよっ」

俺が目の前に見たのは、男子高校生が入っていいのかと思うほどラブリーな店だった。
何でこういう店を知ってんだ…?

「で、買うもの決まってんのか?」
「んーん!これから決めるんだ!」

……呆れた。
普通1週間前くらいから考えとくもんじゃねぇ?
それにここの滞在時間が長くなっちゃうじゃねぇか…。
店内を見回すと、人、人、人。
男の客は俺らくらい。
うえ、今すぐに帰りたい。

「で、どういうのにしようと思ってんだ?実用的なのとか…」
「んー、マグカップとか良いかなって思うんだ!」

あ、そういうのはもう決まってんだ。

「で、その…あげる人(誰だっけ…)の好きなキャラとかは?」
「えーと確か…るるくるだったかな…」

説明しよう!
るるくるとは、神崎たちの世界の女子高生の間で流行っている"殺人人形ラブリーるるくる"というよく分からない人形のことである!

「…なんだそれ…この中にそのキャラいんのか?」
「…えっと…あ!あった、コレコレ!」

神崎が指差したのは、愛らしい顔で右手に鎌、左手に鉈を持った人形の絵が描かれていた。
コレのどこが可愛いんだろ…てか、万人受けもしねぇよ…!

「じゃー、これにする!」

そう言って呆然とそのマグカップの絵を眺めていた俺を放置して、神崎は会計へと向かった。
満足そうな顔で包みを持っている神崎。
苦手なお店で気持ち悪くなっている日比野。


そんな2人に
サンタクロースはやってこない

(澤さん喜んでくれるかなっ)
(あー早く帰って新作のRPG2巡目する…絶対)

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