「Happy Halloween!」

子供達がそわそわ、わくわくしている。
今日は年に一回のかぼちゃの日。オレンジ色が輝く日。
そして、子供達は、お菓子を求めて駆け回る。

「…なんて可愛い子供のすることだね。」

と口を開く双子の姉。

「そうだね、優しすぎて笑っちゃうよ。」

とそう呟いては妖しく笑う双子の弟。
ハロウィンの夜。二人は動き出す。
深い深い霧の中、

「さあ、遊戯(あそび)に招こうか。」
「うん、ついでにお菓子も貰おうか。」

妖艶に響く笑い声。街には届かない森の奥。

昼は賑わっていた街はもう真っ暗。子供はもう眠る時間。
悪戯をしに来た双子の魔法使い。

「おいでおいで、この森のもっと奥深くまで…」

子供達を招いていく、二人のために開かれるハロウィンパーティーのためのゲストとして。
ゆっくりと催眠(ゆめ)の世界へと導いていく。
出来るだけ近くに、急ぎ足でおいで。
もっともっと深く、夢へと堕ちましょう。

「おいでおいで、さぁ愉しい遊戯(あそび)を始めよう!」


魔法のステッキ(シナモンスティック)で夢の中。
シロップという名の甘い罠。

「さぁ、ここで愉しい夢を見よう。」

コーヒーのような苦ささえ忘れて、
天蓋の下で眠りに堕ちていく可愛い子羊。

「甘くて愉しい夢は見れているかな?」


貴方の瞼で目隠しをして、幻想で飾られた催眠に溺れたままでいいから。
だから、目隠しは外さないで、愉しい夢をずっと見ていよう。
足元ご注意、
私(僕)達がその手を引くから、

「「…だからその身を委ねろ、さぁ今すぐに。」」

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「催眠が緩んできたかも、」

双子は少し遊びすぎたよう。
催眠の糸が緩んで疑念の刃が見え隠れする。
催眠に堕ちていた子羊たちが、少しうなされている。しかし、そこに"愛"や"情"などは存在しない。
免罪符など、ここには必要ない。
少しだけ緩んだ目元から、見えたランタン。
子羊たちは自分たちの影に、怯え始めた。


「おやおや、悪い子。もう目が覚めたの?」

双子の姉が妖美な笑みを口元に宿した。

「このまま目が覚めないように盲目にしようか?」

双子の弟がランタンの光で照らされた黒い笑みを向けた。

「「ほらほら笑えよ、こんなに愉しい夜なのに。」」

そう言ってまた催眠(ゆめ)の中へと落としていく…。
双子は催眠の中で芝居を始める。


「……ねぇ、ちょうだい?」


双子の姉の艶っぽい唇が動く。
午前三時は双子のおやつの時間。
お菓子が無いと駄々をこねちゃうの。

「どうしたの、そんな目で身体を震わせて」

双子の弟が笑顔でそう尋ねる。

「温かいミルクで、もてなしてほしいの?」

双子の姉が優しそうな笑顔でそう提案する。
子羊たちは頷くけれど、そうしても本当にいいのかな?

「さぁ、催眠(なか)にお入り。」
「ここはとても温かいよ」
「「その代わり、見返りはそのポケットの中身ね。」」

「ちょうだい、」
「早く早く!ねぇほら、」
「「今すぐに!」」

二者択一の原則?そんなもの知らない。
この双子にはそんなもの通用しない。
"愛"も"情"もいらない双子だもの。
まやかしでもてなすから、甘い蜜(あなたの魂)を吸わせて。

「ちょうだい、」
「「よこせ!!」」
「ほら、今すぐに」
「「ちょうだい!」」




深い深い森の奥。
双子の魔法使いのために開かれたハロウィンパーティー。
招かれた者は、もう二度と現実世界には帰れない。
可愛らしい容姿に、獣の心。
可愛らしい要求は、既に皆無。
子供達のポケットを狙って来年も…。
10月31日は双子の誕生日、パーティーの日。

「「trick and treat!」」

今日も何処かで、双子の悪戯が始まる。


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song parody:
trick and treat
(by 鏡音リン鏡音レン)



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