何で俺は、生きているのだろう。 誰に問いかけるでもなく、ふと考える。 最近減ってきた鬱が俺に降りかかる。 今まで止まっていた涙が、また、溢れ出す。 誰かがノックする音。 涙を浮かべた目のまま、ドアに耳を傾ける。 もうなんだよ、どちら様？ 「名乗るほどたいした名じゃないが、そんなに知りたいなら名乗ってやるぜ!! 雨宮ヒーロー参上！ お前に笑いを持ってきたぜ小宮ァ!!! 中に入れろ寒いから！」 雨宮だって？冗談じゃない。 つっこむ元気もない俺にボケてくれるな馬鹿野郎。 お前を呼んだ覚えはない。 構わず消えてくれ。 そこに居られたら泣けないじゃないか…。 「俺は、泣きたいんだよ…」 力無く小さく呟いた。 ----------- 涙が溢れて止まらない。 小さな部屋に、小さな水溜まり。 落ち着いていた感情が、また、動き出す。 誰かがノックする音。 あいつ、まだいたのか。 消えてくれって言ったのに。 「そんな言葉言われたの初めてだ！ 俺ってそんなうざい？」 うん。 即答できるくらい俺にはうざい。 「なんか、哀しいよ小宮のばかぁ。 なんか泣きたくなってきた…」 雨宮？冗談じゃない。 お前が泣いてどうすんだよ、馬鹿か。 泣きたいのは俺の方なんだ。 お前を呼んだ覚えはないんだぞ、決して！ 二人分の泣き声が、ドアを隔てて響いた。 ----------- ドアを挟んで背中合わせ。 温もりが伝わりそうで伝わらない距離。 しゃっくりをしながら、泣きじゃくって…。 まるで子供。 膝をかかえて背中合わせ。 そこに居るっていうのはすぐに分かる距離。 すっかり泣き疲れてしまって、うとうと…。 既に子供。 今でも俺を笑わせたいの？雨宮。 ゆっくりゆっくり尋ねると、 「それが俺の生き甲斐だからな。 笑わせたら帰ってやるから！」 雨宮、部屋に入ってもいいぜ。なんか知らないけど、ヤツにそう呟いていた。 鍵を開けようと動かそうとしたけど、ガチャガチャ悲鳴をあげるだけ。 錆びついてるのか、固くて開かない。 人一倍力の無い俺は、開けられなさそうだ。 雨宮は鍵を持ってないから、内側の俺しか開けられない。 良かったら、そっちでドアを蹴破ってきてくれないか。 お前、結構力、あっただろ？ ……？ ウンとかスンとか言えよ…。 どうした？おい、まさか。 雨宮？冗談じゃねぇ！ 今更俺を一人にする気か!! 何でだよ、 何でいつも信じたいのに信じきれないんだよ…。 逆側の窓が勢いよく割れる音。 金属バット肩に乗っけて泣き顔で。 鼻が真っ赤でちょっと情けない顔。 そこに居たのは正真正銘雨宮その人。 いつものニカッとした笑いで俺を見た。 「お前に笑いを持ってきたぜ、小宮ァ!!!」 小さい鏡を制服の内ポケットから取り出して、俺に手渡す。 「？」が脳内にたくさん浮かぶ俺。 「鏡開いて顔見てみ。 お前の泣き顔めっちゃ笑えるぞ！」 俺のもだけどな、と言って更にニカッと笑う。 ほんとだ、確かに、笑える。 少し呆れたが、不覚にも声を出して笑ってしまった。 ラフ･メイカー 君は笑いの神様だよ！ ありがとう、雨宮。 と呟いたのは、俺の中で消化されていった。 ＊＊＊ 「あ、雨宮、」 「ん？何？」 「あの窓、ちゃんと弁償してね？」 俺がそんなことを言うと、顔を真っ白にして、 「あ――――――っっ!!!」 と叫んで雨宮は倒れた。 ------------ song parody: ラフ･メイカー(by BUMP OF CHICKEN)