…って、え? 何でこんなことになってんの? こんにちは、佐伯幸人・17歳オス。 今、何故か赤いふわふわワンピに白エプロンのメイド赤バージョンみたいなやつを着ている俺。 こんな格好をしている女性が好きなわけでもないし、勿論女装の趣味があるわけでもない。 俺の意思で着たのではない、断じて。 気が付いたらここでコレを着ていた。 そして、今までいた教室からも飛び出てきたようだ。 この感じから行くと、牧場に近いくらいコンクリがない。 久々の土と草の感触にぞわっとする。 地面についた手がビクッと反応して、行き場がなくなった。 そのまま頭をかこうと頭に手をやると…… ………………え? 何やら頭に被っている。 形からいくと防災頭巾。 いやいや、え? 何で防災頭巾? それは小学生か中学生で卒業したと思うぞ…? よく分からないこの世界をキョロキョロと見ると、自分が座っているすぐ横に編まれているカゴがあった。 そのカゴの中には、 『赤ずきんになった幸人くんへ☆おばあちゃんのうちにお見舞い届けてね♪反抗期よ早く終われと祈る母より』 コミカルな文が3文並んでいた。 カゴの中にはこの紙切れの他に色々と入っていた。 「つか、赤ずきんって…」 何で俺? 耕兄のが似合う気がする…。 なんて愛しの彼のことを思い、脳内からそのことを消した。 何俺の乙女脳!!きもい! 「つか、早く行かなきゃな…」 何だか分からないけど…カゴの中にあった地図を取り出して歩き始めた。 「えっと、ここの分岐点を右…と。」 おばあちゃんの家は案外分かりにくい道のりだ。 分岐点に差し掛かったとき、目の前に黒い影が現れた。 「ふふっ幸人可愛い」 甘く低い声でそう発した黒い影は、耕兄だった。180p近い男がこんなん着ても似合うはずがない。 現に自分の格好で自分が吐きそうな位だ。 コレを可愛いと言う奴はそうそういないだろう。 しかし耕兄はあっさり言ってのけた。 耕兄の目は節穴なんだろうと頭の中で勝手に納得する。 「耕兄、何でこんなとこいんの?」 疑問に思っていたことをスルーした。 耕兄の格好が茶色い狼(?)の着ぐるみであることを。 何ですか、やっぱりコレ、童話の赤ずきんちゃんなんですか。 「そういう幸人こそ、そんな可愛い格好で何処に行くつもりなの?」 また可愛いって言ったよこの方。 ていうか、質問返しされた…。 「ばあちゃんのお見舞い頼まれたから、ばあちゃんち行くけど」 「ふぅん」 耕兄は然程興味が無さそうに相槌をうつと、 「じゃ、俺は大事な用があるからこれで!」 と言って、分岐点を左へと走っていった。 左側って何があるんだろうと気になったが、早く行かないと日が暮れると思い、分岐点を右へと進んだ。 『ばあちゃんち』 と、とてもふざけている看板を発見。 アレ、だよな目的地… 地図には『ココの赤い屋根の家だよ、アハ☆』とうざったらしく書いてある。 母さん…うぜぇキャラだな…。 まぁいいや、入って渡して早く帰ろう。 「こんにちは、お邪魔しまーす」 ノックをして、ドアを開け、ばあちゃんの寝ているベッドへと近付く。 「ばあちゃん、母さんから見舞いだって」 と言って、見舞いの品が入っているカゴを傍にあるテーブルに置くと、急に手を掴まれてベッドへIN! ……は?何でこうなった!? しかも男の手っぽかった! 「幸人…可愛過ぎて、食べちゃいたい」 ベッドの上で仰向けになった俺を組み敷いたばあちゃん(仮)。 上を見上げると、そこには耕兄が。 「…ええ?」 何でこんなんなってんすか… 「童話の赤ずきんちゃんも狼に食べられちゃうでしょ?だから、俺も幸人を食べるんだよ」 いやいやいや、まず童話では食べられてないと思うしね? そんで童話の"食べる"と耕兄の"食べる"は多分…てか絶対に違う。 身の危険を感じて、逃げ出そうとする俺の首筋をちゅうとキスする。 そのまま、耳も舐められ、甘噛みされる。 「ん、」 ちょっと声が漏れる。 耳弱いんだって…! 「幸人、可愛い…幸人の体、いただきます」 甘く低く囁かれると、力が抜ける。 そのまま、俺は耕兄に身を預けた。 にゃんにゃん♪ ------------- To サガミ様 In New Year's card |