「野分!味噌ラーメンと醤油ラーメンととんこつラーメンとチャーハンを一度に食えるチャンスが出来たぞ!!」

久しぶりにお互い休みが重なった昼下がり。ソファーで雑誌を読みながらのんびりごろ寝をしていたヒロさんは、突然さも重要な事でも思い出したかのように慌てて起きあがって言った。

「ええっ?!本当ですか!?でも何でまたそんな急に…」

瞬時に俺の頭の中の3分の1がラーメンで埋めつくされる。
残りの部分は絶対死守してでもヒロさんの事だけど。

「駅前のさ、角にあるラーメン屋知ってるだろ?」
「はい、何度かヒロさんと一緒に食べに行きましたよね」

ひっそりと小さな佇まいながらも、隠れた名店といった感じで味の方もなかなかよかったのを覚えている。

「久しぶりにあそこ行かね?今日は俺が奢ってやるから」
「そんないいですよ。半額セールでもやってるんですかね?」
「いや、ちょっと、な」

ヒロさんはそう口ごもると、誤魔化すように「とっとと準備しろ」とだけ言い置き、自分はさっさと身支度のために自室へと消えてしまった。


本日のデートはラーメンコース決定。
まあそんな日も悪くはない。ヒロさんとだったら、何処へ行っても楽しいし、何を食べても最高のご馳走だから。


「でも本当にいいんですか?」
「おう。遠慮せず頼め頼め!」

以前来た時よりもお客さんの数は多かったが、相変わらず以前と全く変わっていないメニューをぐるりと見回し小声でもう一度確認する俺に構わずヒロさんは店主に目配せを送った。

「親父、こっちに味噌ラーメンと醤油ラーメンととんこつラーメンとチャーハンな!!」
「ヒロさんはラーメン食わないんですか?」
「俺は流石にもう飽きた」
「え?」
「あ、親父、あともう一つチャーハン追加な!」

それはどういう意味かと聞き返す間もなくヒロさんは勝手に男前オーダーを済ますと、ほっと安堵した表情で席に落ち着く。
次いで、「よかったこれで間に合った」とほくほく顔でこっそり財布からカードを確認するのを見逃さない。

「ヒロさん」
「ん?」
「何が間に合ったんですか?」
「あっ、返せ!!」

隙をついてヒロさんの手からカードを取り上げる。

『キャンペーン実施中!期間中にポイントを集めるともれなく当店オリジナルグッズをプレゼント』

景品は…中華パンダのストラップ。
俺が一瞬だけ頭の中をラーメンが占めていた間、ヒロさんの頭の中はこのパンダが占めていたのですね。

「言ってくれればよかったのに。これ今までのポイント分全部1人で食べたんですか?塩分取りすぎですよ?」

思わず口うるさくなってしまうのは職業柄仕方ない。

「わ、ワリぃ。野分も今日は塩分取りすぎだよな…?」
「もうしょうがないですね。しばらくは外食を控えて、これからたっぷり運動してもらうとしてそれでよしとしましょう」

「は?ちょっと運動って…!!」

俺の言う意図を察知したのか、みるみる内にヒロさんの顔が赤くなる。

「帰ったら一緒にいっぱいしましょうね」

「///っつ!だからそーゆーことを往来の真ん中で言うなってんだろ!!!」


俺の世界のセンターでラヴがシャウト。






-------< おわり/>
(12.18up)






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