すっぱいグミと
私は生まれつき目つきが悪い。どのくらい悪いかと言うと、中学のときあ、あの子供かわいいなって眺めているだけでその子に泣かれるくらい悪い。ちなみに側にいた男友達に爆笑された。
そんな私も人並みに恋をした。目つきの悪い私なんて相手してもらえないだろうけど、でも恋をした。その相手は...
「二口ー!!!」
二口は「なに?」と口をもぐもぐさせながら言う。
「あんたの口に入ってるものは何!?」
「すっぱいグミ」
二口はなおも口をもぐもぐさせながら言う。あ、また口にすっぱいグミ含んだ!
「それ!私のなんだけど!?」
「机の上に無造作に置いてる方が悪い」
二口はまたすっぱいグミを手に取り食べる。私は二口をギロリと睨んだ。
「おー怖い怖い。お前が睨むと凄みが違うわ」
そう言って二口はヘラリと笑う。大抵の人は私が睨むと縮み上がるものだが二口はちっとも怖いなんて思ってないだろう。こいつとは中学からの付き合いなのでそのせいかもしれない。ちなみに子供に泣かれた時に爆笑した男友達がこいつである。その時に睨んだ時はちょっとびびっていた。
「てかお前この前すっぱいグミやった時は「すっぱ!こんなグミ有難がって食べる意味分かんないわ」とか言ってたじゃん」
「!!!」
「そんなお前が何ですっぱいグミなんて買ったわけー?」
二口は意地悪く笑う。私がすっぱいグミを買った理由、それは二口との接点を一つでも増やしたいという乙女心だ。そう、私はこのクソ生意気な二口に恋をしている。すっぱいグミを食べれるようになったらもっといっぱい二口と話せるんじゃないかという下心が働いたのだ。しかし、そんなことを二口に言えるはずもなく、私は「うるさい!返せ!」と可愛くない言い方で二口からすっぱいグミを取り返そうとする。二口はヒョイとすっぱいグミを持ってる方の手を上に上げる。
「すっぱいグミも味が分かる俺に食ってもらったほうが嬉しがると思うぜ」
私が何も言い返せずに睨むと、二口はケラケラ笑った。
「返すからそんな睨むなよ」
そう言って二口は「はい」と私の方にすっぱいグミを突き出す。私は素直にそれを受け取った。
「って!半分近くなくなってるんですけど!?」
「気にするな」
「気にする!すっごく気にする!!」
私がぶんむくれていると二口は「しゃーねーなぁ」と腕を組んだ。
「なんか飲み物奢ってやるよ」
「え?ほんとに!?」
機嫌をみるみるうちに直していく私を見て二口は微笑んだ。その微笑みがあまりにもカッコよく、私の胸はドキンと高鳴る。
「お前チョロすぎ」
「ぶっ殺すぞ」
綺麗に微笑んだと思ったらこれだ。私の胸の高鳴りを返して欲しい。二口は「おっかねー」とまた笑った。