▼08.

我愛羅が忍者学校に入って数年が経った。私もお父さんに本格的に商人になるためのいろはを叩きこまれているから中々会えなくなった。今日は久々に予定が合って公園のベンチに座っている。

「我愛羅、最近ちゃんと食べてる?」

「…………。」

我愛羅は私に視線もくれずに巻物を読んでいた。最近、我愛羅は私に冷たい。でもこうして会ってくれているのだから嫌われてはない。(と思っている。)我愛羅を恨めしく睨むとふと我愛羅の赤毛が目に入った。

「………。」

「なんだ、やめろ。」

我愛羅の頭を撫でてみる。我愛羅は煩わしそうに私の手を優しく払った。

「ちっとね、なでてみたくなった」

へへっと笑うと我愛羅から冷たい視線が飛んできた。しかしすぐに逸らされまた巻物に戻る。私はまた我愛羅の赤毛に手を伸ばした。

「…………。」

「ふわふわー。」

我愛羅からため息が聞こえてきそうだ。それでも私は撫でるのをやめなかった。我愛羅は巻物を読むのをやめて、元の形に戻した。その巻物でペチンと手を叩かれる。

「いてえ」

「……なにを聞いてほしい」

「ふへへ、聞いておくれよ、この間お客さんがね……」

……

なまえが話始めて15分ほど経った。俺は無表情に話を聞くだけなのにこいつは楽しいのか?と思うも、なまえは楽しそうに喋っている。

「それでね、そのお客さんなんて言ったと思う?」

ふとなまえの髪の毛が目に入った。ひと房触ろうと手を伸ばす。

「我愛羅?」

なまえの声でハッとする。なに触ろうとしているんだ俺は。寸前で伸ばしかけた手を止める。その手は何も触ることなく空を切った。

「……伸びたな」

「あ!わかってくれる?」

なまえは照れくさそうにへへっと笑った。

「お母さんが“見た目いい方が売れるのよ。あんたは私に似て長髪のほうが似合うからのばしなさい”って。お客さんにも“綺麗な髪だね!”って褒められるんだよ!」

「……。」

その客って、男か?なんて質問が口から出そうになる。……なにを聞こうとしてるんだ俺は。客が男だろうと女だろうと関係ないだろ。そうは思っても、何故かイライラした。なまえの接客する姿をこっそり見に行ったことがある。楽しそうに働いていてホッとしたと同時に、男性客に愛想を振りまいていて、その時もなぜか無性に苛立った。

「我愛羅、怒ってる?」

なまえが心配そうに聞く。こいつに落ち度はないのに、肯定すれば謝ってくるだろう。本当にお人好しなやつだ。

「別に」

「よかった!それでね、お客さんがね……」

……

アカデミーの授業の都合でなまえに会えずに3週間が経った。今日も授業がおしてなまえに会えなかった。俺はため息をつきそうになった。……あいつは元気にしているだろうか。

「我愛羅!」

バン!と勢いよくドアが開けられ、入って来たのはテマリだった。俺はテマリを睨む。

「……なんだ。」

「なまえの両親が死んだらしい」

その言葉に衝撃を受ける。死んだ?しかしひと月前ほど前に見た時は元気そうにしていたのに。病気ではない。じゃあ……

「商品を搬入してるときに落石が落ちてきて下敷きになったんだと、死体も回収できなかったらしい」

「…………。」

なまえは、なまえはどうなる。あいつの両親が死んだらもしかしたら風の国にずっといてくれたりするのか……?そんな考えが頭をもたげかかって俺は舌打ちした。なにを考えているんだ。

「今日が葬儀らしい。行ってやりな」

「…………。」

俺が行くと他に葬儀に来たやつが怯えるんじゃないか?台無しにしてしまうんじゃないか?そう思って動けずにいるとテマリは俺の肩に手を置いた。

「行ってやりな。きっとなまえにとって1番安心できる奴はあんただから」

「っ!」

そう言われて俺はなまえの元へ急いだ。

……

葬儀会場に着くとやはり皆怯えたように縮こまった。俺はそんな連中を無視してなまえの元へ行った。なまえは最前列で正座していた。

「……大丈夫か」

「あぁ、我愛羅来てくれたの……。ありがとう……。うん、大丈夫だよ……。」

なんの表情もなくなまえがそう答える。大丈夫なわけないだろうと思うも、こんななまえは初めてで、どうすればいいのかわからない。訳の分からない状況に放り込まれると対処法がわからなくなる自分に苛立った。するとなまえが俺の利き腕を掴んだ。

「これ……この勾玉、」

なまえにもらった勾玉のブレスレットは肌身離さずつけている。その勾玉を見てなまえは愛しそうに笑った。

「私が初めて働いてお父さんお金もらって買った。…………っ!」

うわあああああ!となまえは泣き出した。慟哭した。あまりの衝撃に目を見開く。なまえは泣き続ける。どうしていいかわからない、慰め方がらわからない俺は昔なまえにしてもらった事を思い出した。掴まれてない反対の腕でそっとなまえを抱き寄せるとなまえは素直に従った。その慟哭に呼応するように、周りの大人たちもぐすぐすと泣き始めた。葬儀が終わるまで、なまえは泣き続けた。




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