せっかくの休日だというのに今日は一日雨が降るらしい。 澄ました顔の天気予報のお姉さんを、あんなに恨めしく思ったのはきっと初めてかもしれない。 どうにか晴れたりはしないかと窓の外を眺めてみても、一向に止む気配はなく。 むしろレインコートの子どもたちが楽しそうにはしゃぐ姿が見えて、まだ二十年とちょっとしか生きていないのに自分も年を取ったと思ってしまった。 雨の日が嫌いというわけじゃない。 ただ今日は本当に久しぶりに、恋人と休みが重なることがわかっていたから。 どこかにでも出掛けようかなんて、勝手に考えていたのだけれど。 「……はぁ」 そういう日に限って雨が降るものだから、思わず溜め息が漏れてしまう。 おまけにこの部屋の主は、私のことを放置するつもりのご様子で。 二人掛けのソファーに腰掛けて一人読書をする恋人の隣に、どすんと音を立てて座る。ノーリアクション。無反応。ぐすん。 何の本の読んでいるのか気になり覗き込んでみたけれど、小難しそうな文字の羅列が見えたのですぐにやめた。 私が読んでも夢の世界へ旅立つだけだろうと、そのまま微動だにしない彼の右肩へもたれ掛かる。 普段ならば「重い」やら「邪魔だ」等といった言葉が飛んでくるのに、それがない。つまり彼女である私が隣にいても相手をしてくれる気は毛頭ないらしい。 彼の中で本>>>私という優先度になっている事実を嫌でも思い知らされて、ほんの少しだけ心がずきりと痛む。 けれど邪魔をするのは気が引けたので、チラリと横顔を盗み見るだけにした。 すらりと伸びた鼻筋に切れ長の目。さらさらの銀髪。 私の恋人は、街を歩けば十人中十人が振り向くほど格好良い。……外見だけは。 学生の頃から、何人もの“美人”と言われるような女の子達が自信満々に告白してこっぴどく振られていくのを見てきた。 顔だけは良いのだ。 顔だけは。 しかし内面は、容姿から差し引いたとしても……うん。 察してほしい。 だから、どうしてそんな男と何の取り柄もない平凡な私がこういった関係になれたのか、共通の友人達には今でも不思議がられる。 かくいう私も不思議でしょうがなかったりする。 どうして彼は私を選んだのだろうか。 「…………」 「…………」 雨音が支配する空間の中に、ページをめくる音が時折響く。 私の定位置が彼の隣になってからもう随分経った。 少なくとも、大事にされているとは思うし、勿論幸せだ。でも、不満がないわけじゃない。 無愛想で堅物で口下手で、そんなところもひっくるめて私は彼を愛しているんだけれども。 (ごめんね三成。やっぱり私も女の子なんです。好きな人に愛してるって言われたり、抱きしめてもらったり。そういうこと、沢山してほしいの。 これ、わがままには入らないでしょう?) そんな願いを心の中で燻らせたまま私はそっと目蓋を閉じる。次に起きたとき、彼が私と一緒に過ごしてくれるのを期待しながら。 続く日々も君とありたい |