第3回 | ナノ
幼なじみの大好きな彼女が、ここ最近いつもと違う気がする。前より笑顔が増したし、女らしくなった。気持ち悪いくらいに。その理由はボクの心を揺るがす、最悪な出来事のせいだった。

「私ね、彼氏ができたの」

ほんのり頬を染めながら照れくさそうに言う彼女。ボクは全身の機能しているあらゆるものが一瞬止まった気がした。今まで恋愛の"れ"の字も語ったことのない彼女が、なんでいきなり…。今にも涙が出てきそうになって、ボクは必死でズボンを握りしめた。くしゃくしゃと皺になるそれはまるでボクの心だ。苦しい、ちゃんと笑えているだろうか。

「さっさと告白しないと誰かにとられるよ」

親友のチェレンに言われた言葉。全くその通りだ。度胸が無くて、幼なじみのままでいいって思っていた。彼女の中で男はボクが一番近かったから。だけど今となってはその彼氏が彼女の中の一番。今更後悔したって遅いのは分かっている。でも彼女にいろいろ教えてきたのはボクじゃないか。同じ日に旅に出て、バトルに負けて泣く彼女を慰めてあげて…。そのボクの行動や思いは彼女の中に残ったのだろうか?

「トウヤ、聞いてる?」
「え?あ、うん」

全く聞いていなかったが、彼女によって現実へと引き戻される。それから彼女は馴れ初めというものを嬉しそうに話し出した。転んだところを助けてもらったこと、たまに会っていて片思いしていたこと、勇気を出して告白したら良い返事をもらえたこと。そこまで聞いてボクはボク自身を笑った。彼女ですら告白する勇気を持っているのに。いつのまにここまで成長していたんだろうか。

「トウヤ?」

突然立ち上がったボクを彼女は不思議そうに見上げた。ムカつく、自分が。何だよこの様は。情けないったらありゃしない。

「ねぇ、」

ふわりと彼女の髪の毛が風に舞えば、無防備な白い肌が晒される。ドクンと心臓が脈打って、ボクは彼女のその額に唇を落とした。触れるだけの優しい口付け。目を真ん丸にした彼女の頭をくしゃくしゃと撫でてからその場を離れるために歩き出す。

「ほんと、情けないなぁ…」

言ってやらないよ、おめでとうなんて。言ってしまったらそれこそ自虐行為だ。彼女は、今どんな顔をしてボクの後ろ姿を見ているのだろうか。笑ってる?泣いてる?それとも…。そこまで考えて強く拳を握った。


:)20120417
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