第20回 | ナノ
わたしはめんどくさがりだ。
それもかなりの。

でも、それを直そうとは思わない。


「けんまー」


ベッドで寝そべりながら、すぐ傍でゲームをしている幼馴染に話しかける。
同い歳の幼馴染、研磨の部屋にお邪魔するのは毎日のことだ。

幼馴染だからというワケもあるが、何より私が研磨に"依存"してるからだ。


「…なまえ、いい加減家に戻りなよ。」

「えーいーじゃん、研磨ん家落ち着くし。」


現在時刻 20:30
時々、夕飯をご馳走になったりすることもあるが、今日もそうだった。
もちろん家も隣なので、すぐに行き来することができる。
幼馴染というものは便利だ。


だが、この時間になってあることに気づいた。


「あ、そういや課題やってない。」


「…また?」


「またって何。いつもはちゃんと自分でやってますー」


「…たまには自分でやりなよ。」


「だって分かんないし!」


明日提出の数学の課題。
数学は私がこの世で最も嫌悪するものの内に入るほどだ。
とにかく、数学は人類の敵だ。


「…持ってきなよ。ちょっとなら教えてあげる。」


「やっほーい。」


怪訝そうな顔をしながらも、研磨は何だかんだ言って教えてくれる。
いやぁ、私ったら良い幼馴染を持ったなぁ。


だが、一旦家に戻ろうと腰を上げた瞬間、私に途轍もない怠惰感が襲った。
私はすぐにひょろひょろと床に腰をついた。


「…どうしたの。」


「……………。」


「…やる気ないでしょ。」


「い、いや、そうじゃないんだ。ただ立ち上がった途端、すごく面倒くさくなって……。」


「………………。」


私が黙って援助の眼差しを送れば、腫れものを見るような目で見られた。
まぁこんなものもしょっちゅうだ。


私は重度のめんどくさがりで、ただ家に一旦戻るだけでもめんどくさいと感じてしまう。
ものすごい怠惰感を感じ、動く気力が失うという驚異の力を持っている。
まったく恐ろしい。


「…ホントになんでなまえって何でそんなにめんどくさがりなの。」


「研磨も似たようなもんじゃん。」


「なまえほどじゃないけど。#名前#は重症すぎ。」


「でも、そんなこと言いながら研磨、けっこう世話焼いてくれるよねー」


「幼馴染だし、慣れた。」



昔から研磨とはずっと一緒に居る。
もう一人年上の幼馴染が居るけど、私の昔からのめんどう嫌いはずっと変わらない。
研磨はぶつぶつ言いながらも、面倒を見てくれたりする。


私、研磨が居るおかげで生きていれるようだ。
研磨が居ないと私、めんどうくさすぎて死ぬかもしれない。


研磨は怪訝な顔から、少しだけ微笑んでつぶやいた。



「それと、なまえが好きだから。」



こんな世話焼きな幼馴染、研磨しか居ない。
そんなことをふと思った。
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