「昼間の太陽は凄かったなァ」 「本体は情けねえ奴だったけどな」 パチパチと燃える木を少し愛おしそうに見る仲間。 砂漠のど真ん中で今日は夜を明かす事になった。テントも寝具も在る故自身としては困らないのだが、どうやら女と言うものは違うらしい。本来ならこの旅に女は混ぜないつもりだった。そもそも、あのジジイが承諾しないだろう。 しかし、今現在その女が混ざっている。 其奴はDIOの手下でも何でも無い只のクラスメイトだった。やたらと俺に関わってくる女だった。…否、今もだが。それでも何処か、俺に纏わり付く鬱陶しい女とは雰囲気が何処か違っていて、何故か関わりやすいと思った人間だった。 其奴は、仲間の事を一番に考える女と形容しがたい女で、一言で言うなら男勝りでドライな奴だ。仲間の事を大事にするが、例え死んだとしても"仕方がない"と片付けられる奴であろう。"一番に現実を見る"女だ。理想ばかりを兼ね添えた女とはどうも違う様だ。 「暑くねぇの?」 「あ?」 「承太郎さ、よく学ラン着ていられるなァ」 「てめえは転校した時の侭の制服だろ、それ…」 「うん。冬でも夏でも半袖だ」 それだけ言うと、其奴はバッグから持参していた水を取り出し、一気に飲み干した。ぐくり、と喉奥の水を吸い込む音が此方迄聞こえてくる。その動く喉元についつい眼が行ってしまう。好きなのか、と言われてもどうかは解らない、が。 大分着て古したその半袖の制服が、火の光の御陰なのが、随分真新しく見えた。ポルナレフも花京院も、既にテントの中で睡眠を貪っているこの時。どうしてだか、"たった二人"だけの時間に見えたのはきっと俺だけだろう。 その誤認を晴らす為其奴に話しかけた。 「夜の砂漠は唐突に冷える。寒くないのか」 「慣れるさ。私はどちらにも強い方でね」 「砂漠の直射日光は避けた方が良いとも聴くが」 「んー、じゃあ承太郎の上着貸してよ」 「無理な頼み事だ」 "だろうなァ"とけたけた笑いながら其奴はぐっと足を組んだ。 スカートから除く足はとても長く綺麗だとも思った。何時か言っていた気がする。スカートはひらひらするから好かん、と。 「履いていた方が、綺麗な気がするんだがな…」 「お?何か言ったか?」 「なんでもねえ、寝るぞ」 「もう少し起きとくわ」 「…はあ、やれやれだぜ…」 女一人外にほっぽり出しとく訳にも行かねえだろ。 そう想い俺はもう一度自分が座っていた石に座り込んだ。何だよ、傍に居てくれるのかと嬉しそうに微笑む其奴を見て、ああもしや、此奴も俺と同じ想いなのか、と自惚れたのはここだけの、自分だけの秘密にしておいておく事にした。 他愛も無い話をして、また、朝を迎え様とした。今が夜中だろうが朝が来るのを俺は只管待った。朝が来れば、きっとこの思いも忘れるだろうから。 * * * 「ポルナレフ、起きてるかい?」 「あァ、」 「面白い二人だね…」 「早くくっ付きゃ良ーのになァ…」 「ふふ。」 二人が知らない処では、きっと二人の愛を望んでいる人だって居るんだから。 * * * 二人だけの本当の夜中 (今日はこれでも、またきっと二人の夜中は本当に来る筈) |