第18回 | ナノ
清楚な彼女。
俺からすれば夢のような存在だったけど、今こうして隣にいる。
図書室で仕事をしていた彼女に告白したらあっさりOK。やってみる価値もあるものだ。
出会いは図書室。きっかけは自転車関連の本を借りに行ったこと。
そして、図書委員当番の彼女が目に入った。左手にいくつか本を抱えて、右手で長い髪を耳に掛けていた。
その仕草が、堪らなく魅力的で一瞬にして心奪われた。正直、魅入った。指先が綺麗に耳の縁を滑ったところで、すぐ目を逸らし図書室を出た。借りる本も忘れて。
そのまま寮に帰って、福ちゃんに目当ての本は借りれたか?と聞かれキョトン顔をしてしまった己の恥ずかしい記憶は出来るなら消し去りたい。
そんなくだらない話でさえ、彼女は笑ってストレートの髪を揺らす。勿論、彼女に一目惚れした流れは伝えない。言ったらまた、無邪気な顔して笑うだろうから。

「靖友くんのおかしい話、もっと聞きたいな」
「誰が話すかヨ」
「えー面白いのに」
「……髪、切んな」
「?唐突だなあ」
「っせ、」

けらけら笑いながら、また右手で髪を耳に掛けるなまえ。
だからお前のそういうトコに惹かれたんだっつの。口が裂けても言わねーけど。
ふと彼女も何か思い付いたように、笑うのを止めた。

「あ。私、靖友くんの面白い話、ひとつ友達に話しちゃった」
「?」
「抱きしめてくれた時にね、優しくぎゅってしてくれるの。」
「…は?」
「やっぱり無意識?なんかね、壊れ物を扱うみたいに抱きしめてくれるから、大切にしてくれてるんだなーって伝わるよ?」
「ッセ!!」
「私そんなヤワじゃないから。もっとこう、」
「なまえ、いいからお前もう喋んな!」

本人を目の前にして、そこまで包み隠さず言わなくたって良い。しかも友達にまで言ったのかヨ。そいつ確かオレと同じクラスだったような。何これ羞恥プレイ受ける程、オレなんかした?
このままやられっぱなしは性に合わないから、反撃開始だ。

「…なァ、そんなにやって欲しいなら今してやるよ」
「わっ!」

何の前触れもなく、正面から抱く。
自分より小せェ身体にあまり力を加えないように気を付けていたが、彼女の本望なら叶えてやろうじゃねーか。

「ちょっと、やすとも、強くない?」
「ワガママだねェ。こんくらいが良いんだろ?」
「背中、爪が…、」
「…なまえが俺に跡付けるのがフツーだろうなァ」

簡単に力を緩めてやんない。
コイツも満更じゃなさそうだ。その証拠に、長い髪を掛けてる耳が真っ赤になっている。
あーあ、そういう所まで色っぽいもんだから余計に惚れンだろーが。照れ隠しするみたいに、ギュッと力を込めてやった。



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