第17回 | ナノ
「おはよう向日」
「おう」

ちょうど中二になった頃から、私と岳人はなんだからギクシャクしている。お互いがなんとなくお互いを避けて、私の方は向日なんて名字で呼ぶようになったし岳人の方は名前すら呼びもしないのだ。ここまで来るともはや幼なじみという立場も役に立たないななんて溜息しか出ない。

幼なじみを抜きにしても岳人はそれは可愛くて、かっこよくて、兄貴肌だけど我が儘で、みんなの人気者で…。好きになる子たちは岳人は知らないだろうけどとても多い。そして私も例外ではなかった。

「おはよう亮」
「おう、また元気ねぇなぁ。もう一年くらいたってるだろ」
「でもつらいよ。しかも告白されてるとこ見ちゃったし。好きな人がいるって断ってた。あー…」
「しっかりしろよ。そういえば今日岳人と日直なんだろ?」
「えっ」

亮も幼なじみだけど岳人と違ってちゃんと話を聞いてくれる。私が岳人が好きだとも知ってる。亮みたいになってくれたら話しやすいんだけど。それにしても岳人と日直なんて。喜んでいいのかどうなのか。

不安な気持ちのまま時間は過ぎた。放課後の静かな教室で私は日誌、岳人は黒板を綺麗にしていた。気まずい雰囲気が流れる。今日岳人部活じゃなかったっけ。

「日誌もう少しかかりそうだから、先いいよ。今日部活だったよね」
「いいよ待ってるから。」
「時間かかるけど?」
「待ってるって言ってるだろ!クソクソ、俺といるのがそんなに嫌かよ…!」
「嫌じゃないけど…向日私のこと避けてるし。」
「は?それは…お前が名字で呼ぶようになったから…」

岳人の言ってることが分からなくなってくる。避けてたんじゃないの。名字で呼ぶようになったからって何。私のこと…嫌いになったんじゃないの?

「む…岳人だって、岳人だって私に素っ気なくなったし前みたいに話してくれないし名前だって呼んでくれないし、いつもテニスばっかり…」
「それは…なんつーか…わりぃ。お前が…みょうじが、なんか急に知らない人みたいで、大人っぽくなったつーか…そんなんで話し掛けにくかったし。」
「嫌いになったんじゃないの?」
「そんなのあるわけねーだろ。俺はいつもみょうじのこと…」

そうなんだ。そっか、嫌いになったわけじゃないんだ。それなら…

「私ね、」


くるおしい距離

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