第14回 | ナノ
「私ね、男性嫌いなの」

「知ってる」

「けどエイブリーのことは好きよ」

「それも知ってる」

素っ気なく返してくるエイブリー。本当に分かっているのだろうか?私がこんなにも貴方を想っているということを。

私には兄弟も父親もいない、いるのはか弱い母親だけ。その他の男性にもほぼ関わらずに生きてきた私はホグワーツに入って初めて男性…異性と関わりを持った。

話すことは出来るようになったし、目を合わせることも、近づくことも出来るようになった。それもこれも一年生の時からずっと世話を焼いてくれたエイブリーのお陰だと思う。
けど、まだ男性に触れることは出来ない。だからこそエイブリーはまだこんな私といてくれるのだと思う。

エイブリーは私が彼に抱いている愛情を友情という意味だと思ってる、全く…なんて鈍感なんだ。
けれど私がエイブリーに抱いている愛情は歴とした恋愛のもの。彼のことが愛しくて愛しくて、だからこそ彼に触れることの出来ない自分に嘆きつつも、このまま私のそばにいてくれるというのならそれでもいいかなと思ってる自分がいる。…なんていうか、私って我儘。

もし、私がエイブリーに恋に落ちてる…なんて彼に言ったら彼はどうするのだろうか。呆れたり、愛想をつかしてしまうだろうか。私が男嫌いだから。……でもそれは困る。

「ねえエイブリー」

「何」

「もしもよ?私が貴方に恋に落ちていた…なんて言ったらどうする?」

一瞬、エイブリーの澄んだ瞳が揺らいだ気がしたけれど、瞬きをした瞬間無かったのできっと勘違いなのだろうな。

そのエイブリーはスッと空を見上げた。私も彼の隣で同じ行動をして空を見上げる。今日の空は雲1つ無い快晴。

「期待をするな」

「はい…?」

思っていたのと違う反応に思わず空からエイブリーの方へと視線を移す。
珍しいことにエイブリーはいつもの不機嫌そうな顔でなく、かと言って満面の笑みではないが、とにかく小さく微笑んでいたのだ。珍しい、明日は槍が降ってくる。

…あれ、そういえばエイブリーなんて言ったっけ……。

「………え」

「反応遅い」

相変わらず微笑みながらもツッコんでくるエイブリー。…それより、期待と言われたのですがあの?

「顔赤い」

「え、エイブリー」

「何?」

「エイブリーって私のことが好きなの?…恋愛的な意味で」

人生で一番恥ずかしくて、一番勇気のいる言葉だったに違いない。何で言ってしまったのかと一瞬後悔した。

「好きだ」

その言葉にクラッときて、そこから意識が途切れてしまった。

*

「大丈夫か?」

「お、お陰さまで…」

あの後盛大にぶっ倒れたらしい私をエイブリーは医務室に連れていってくれたようだ、白い天井が見える。

ベッドの横ではエイブリーがいつもと変わらない不機嫌そうな顔に戻っていた。

「で、続き」

「はい!?」

「なまえは俺のこと好きだろ?」

それは確認ではなく確信みたいな声で…まぁそうです、好きなんです。
ところで先程から思っていたのだけどいつものヘタレなエイブリーは何処へ言ったんですか、それとも彼はロールキャベツだったのですか?いや、ロールキャベツはマルシベールだけで充分です。

「なまえ?」

「す、きです…今はまだ君に触れれないけど」

そう言って頭を下げるとぐいっと腕を引っ張られ、エイブリーの腕の中に収まった。

「え、エイブリー!?」

「触れれないというなら今補充しとく…一年分」

「ま、待って!」

顔が見えないけれどエイブリーがまた笑った気がする。
私もまだ男性に触れることは出来ないはずなのに今の状態が心地よくて。

「(ねぇエイブリー)」

私がもしこの腕を振り払ってしまったとき、貴方はそれを止めてくれますか。
私と貴方を繋げてくれますか。
もしそのときは、

「(貴方にお願いがあります)」

私の両腕を縫い付けて貴方から離れれないようにしてください。



私の両腕を縫ってくれますか

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