※現パロ・ストーカー表現・自慰描写あり 天に召します私の神様、地上に下られたあなたの化身たる彼は今日も麗しく私の世界を照らしています。私、あなたの大きな意思を感じているから寂しいなんて思いません。あなたの眼に私が映っていない時もあなたが魂で私を見ていてくれることを知っているもの、きっと私の頑張りを見ていてくれているのでしょう、神様、どうか、この愛を愛して下さい。 その輝かしい金髪が私の世界を照らし始めたのは、いつかの冬の朝だった。 冷たい風を切った頬が赤く染まり、軽く乱れた息が白く昇る。まだ眠い目をこすりながらギリギリで乗り込んだ電車は何時もより混んでいて、せめぎ合う黒いスーツの間にすばやく潜り込んだ。 乗り換えの駅まで十五分すこし。いつもなら私は本に夢中であっという間なのだけれど間の悪いことに昨日ちょうど一冊読み終えて新しい本をカバンに入れるのを忘れてしまっていたところで、手持ち無沙汰な私がなんともなしに窓の外をぼんやり眺めていると電車はやがてトンネルに潜り、真っ暗になった窓に車内のわたしたちが映る。 くたびれた顔のおじさんおじさん、不機嫌な顔のおばさん、ああつまらないどいつもこいつもなんだってこんなしみったれた顔をしてるんだろう。心の中でちいさく舌打ちをした、その時。 もやもやしたグレーの頭たちの間に、私は神の光を見た。 それからわたしの世界はぐるぐる回り、回り、生まれ出でた新しい世で彼は一段二段どころかバベルの塔の如く天高く聳えた神の国から私に微笑みかけるのだった。 ……正確に言うなら、この物質世界で彼が私に微笑んだことどころか私の存在を認識したことすらないのだけれどそれも仕方のないこと、あの美しい姿ですら人ならざる存在が物質として人間の姿をとっているにすぎず、私はその奥にある彼の大いなる愛に気付いているからして二人の愛になにも問題などありはしないのだ。 神がこの世で名乗られている御名は、アルミン・アルレルトと言った。 ちなみに私がこの名前をどうやって手に入れたのかというと、まあそんな些細なことはどうでもいいのだが彼が人間として通っておられる学校の制服から在学中の高校を特定、ひと気のない頃に忍び込んで現在の在校生全ての名簿をちょっと調べさせてもらったのだけれどこの世における違法行為など大いなる意思の前には塵ほどの意味も為さないのはもう皆さんご存知でしょう。 まあそんなわけでいつの日か来たる時に私と彼は結ばれる運命なのだけれどその然るべき時に備え私は彼に出会った翌日から常に彼のおそば近く控えることを自分に良しとしたのであった。 それからの私の人生は薔薇色、なんと言ったって私は神様を見つけたのだ。私の部屋が物陰から撮った彼の聖像でいっぱいになった頃 私は大きなスピーカーを買った、流れるのは勿論彼の声。彼の自宅は小さなアパートで神様が住むには適してないようだった、何故ならその部屋の鍵は楽々空いてしまったから。それともやはり大きな愛の力かしら、私は夜毎彼の独り言や生活音を拝聴することができるようになった、運が良ければ、喘ぎ声。 といっても彼に触れるような不遜な輩はまだ幸い現れていなくて、もっともっと幸運なことに私が耳にしているのは、なんと、彼の自慰行為によるもの、嗚呼、なんてなんて美しいんでしょう! ねえ神様、私、あなたのその錦糸の髪の毛、度が合わなくなってきた銀縁の眼鏡、幼馴染みに向ける羨望の眼差し、あなたのコンプレックス、その賢い脳の向こう側にある偉大な存在を愛しています。 そしてあなたが何をしている時も誰といる時もどこにいる時もいついかなる時にも私あなたのおそば近くでずっと見てる見てる見てる見てる見てる見てる見てる見てる見てる見てる見てる見てる見てる見てる見てる見てる見てる見てる見てる見てる見てる見てる見てる見てる あの輝かしい邂逅の日から幾年がすぎて、彼は大学一年生。私は彼よりひとつ年上だったので浪人して彼と同じ大学に入った。本当なら高校も転校したかったのだけれど然るべきタイミングの前に悪目立ちするのは困るでしょう、それに私は神の子を孕まなくてはいけないのであまり早くに出会いすぎてしまうのも考えもの。 私はもちろん、人間としての彼がどんな娘がタイプが知っていて、それは彼が友達から押し付けられて捨てられずにいるエッチな本の中のお気に入りのページを知っているからなのだけれど、とにかく私は髪を伸ばし始め、幸いもともと見苦しい方ではないのでそう多くはかからなかったけれど少しだけ顔にメスを入れ綺麗に整えて、そう今日こそは運命の日。 入学してから暫くの間に、私はまず彼の幼馴染みの友達から始めて徐々に彼へと近付いていき、焦らずじっくりミカサ・アッカーマンとエレン・イェーガーの信頼を勝ち取り、といっても彼らはあまり人間に興味がないようなのでものすごく仲良くなれたわけではない。まあ、彼に紹介するのに抵抗がないかなというところまで近付ければよくて桜が散って緑が芽吹き始めた五月、私はついに彼と昼食の席で出会うことになる。 彼は大学入学と同時に慣れ親しんだ眼鏡を外しコンタクトを入れていてちなみに私はもちろん初めての日の彼の「……痛いっ」という小さな悲鳴を遠くから聞いていたのでレンズ越しでない碧眼に私が初めて映る瞬間をよりいっそう嬉しく微笑みながら振り返る、ふわりと風に揺れる髪からは彼の高校時代憧れていた先輩と同じシャンプーの香りが効果的に彼に届くはず、彼は最近読み始めた難しい本を抱えて立っている、私たちは初めて目を合わせ、そして恋に落ちる。 「あの……ここ、座ってもいいかな」 「ええ、どうぞ」 嗚呼、それではこれを以って、私が聖母となるまで、この胎に聖なる命が宿るまで、あと七年と四ヶ月というところかしら。 私の眼球を愛でてくれますか |