※大学生設定 茹だるような暑さが続く中、バイト先で花火を貰った。せっかくなので、黄瀬を誘ってやろうかと思った。 「水の準備できたっスよ」 「おー。サンキュー」 「そういえば……黒子っちはいないんスか?」 「今日はバイトだって」 「ふーん、ならしょうがないスね」 「おう」 黄瀬の近所の公園でひっそりと花火をする事になった。内容はたいしたものはなく、手持ち花火が数本と線香花火といういたってシンプルなもの。ビール片手にちまちまやるのも中々いい。 夜の公園は昼間の暑さが嘘のようで、風がひやりと通り、下手に家にいるよりよっぽど涼しい。 「何か、あっという間スね…」 「まあ、元々少なかったし」 ちまちまやってはいたが、少ない数を二人でやるのだ、すぐに終わりがきた。後はお決まりの線香花火だけ。 「小さい頃ってさ」 「ん?」 「なんで線香花火なんかあるんだろ、って思ってた」 「ああ、確かに」 「もっと派手なやつを増やしてくれよ、って思ってたなー」 「オレもそれは思ったことある」 「最近になってからなんだよな、線香花火好きになったの」 「子供の時はそうでも、大きくなると、結構もんな好きになるスよね」 「うん、なんでだろうなあ」 「さあ。なんでっスかね」 それはきっと、線香花火の一瞬の輝きと学生時代の僅かな時間を重ねてしまうからなのかもしれない。 楽しい時間は続かない。いつまでも子供のままじゃいられない。 駆け抜けていった青春。 短かった子供にさよならを告げ長い大人の始まり。 「あ…落ちた」 「ね、なまえ。これよく10本とか纏めてやらなかった?」 「あ、やったやった、元気玉とかいって」 来年も、こんな風にいられたら、と思う。だけど解っているんだ、そんなのは無理だって。 「今思うとかなりもったいないっスよね」 「うん」 僕らの夏はこんなにも儚い――。 |