「私達ってさぁ」 「うん?」 「付き合ってんだよね?」 お互いに一糸纏わぬ姿のままベッドのシーツで横たわっていた時、思わず口を衝いて出てしまった言葉だった。 確かに私達はデートをする時もあるし愛を囁き合うしセックスだってする。 私は臨也のことが好きだけれど、彼はそんな風に見えなかったから思わず聞いてしまったのだ。 「違うの?俺はそうだと思ってたけど」 「臨也はさぁ、私のこと好き?」 「もちろん好きだよ」 「愛してる?」 「愛してるさ」 「私も好きだよ」 「うん、だから付き合ってるんでしょ?」 付き合おう、と言い出したのは臨也だった。 私と臨也は同じ高校で、私は後輩だった。 昔は折原先輩と呼んでいたけれど、その頃に臨也でいいよ、敬語もいらないなんて言われてから私と臨也は少し近くなった。 皆が平和島先輩を避けたり、臨也をちやほやしている中で普通に平和島先輩と話したり、臨也に文句を言ったりしている私を気に入ったのだろう。 臨也は他と違うことをする人が好きだから。 そんなある時に付き合おうか、と言われたのだ。 だから私達の付き合いはかれこれ七年半ぐらいになる。 七年半も付き合ってきてどうして突然こんなことを言ってしまったのか、自分でもよく分からないけど、一度溢れた疑問は留まることを知らないもので。 「私ってさ、人間じゃん」 「うん、そうだねぇ」 「臨也はさ、人間が好きじゃん」 「うん」 「私が、人間だから好きなんじゃないの?」 「確かに君が人間じゃなかったら好きにはならないから間違ってはいないけど」 「臨也は私が少しだけ他人と違う行動をしてたから気になっただけなんじゃないの」 「きっかけは、そうだね」 「じゃあ、臨也にとって私って必要なの?今の、臨也にとって私って必要かな?」 「隣にいることが当たり前になっちゃったからねぇ。割と必要だよ?」 「そう、でも私にはもう臨也は必要じゃないかも」 ベッドの横に落ちた脱ぎ捨てられた服と下着を拾ってだらだらと袖を通しながらはっきりと呟いた。 自分でもこんなことを言うつもりはなかったから少し驚いたけど、不思議と後悔はなかった。 相変わらず余裕そうな顔をしているのかと思ってチラリと臨也の方を見やると、意外にも不機嫌そうな顔をしていて、この瞬間に初めて私は臨也に愛されていたのかもしれない、なんて思った。 「…なんで?」 「なんとなく。そろそろ臨也離れしようかなって」 「何その理由」 不機嫌そうな臨也を尻目に私は服を着終わり、ぱたぱたと軽く埃を払って立ち上がって、臨也の方に向き直り言った。 「臨也、おしまいにしよう」 「……君がそう望むなら、そうしようか」 「悲しくないの?」 「悲しくはない、少し寂しいけど」 「そっか、じゃあ私帰るね」 「ねぇ、本当にいいの」 「いいんだよ。これで、私達の彼氏彼女って関係はおしまいにするの」 「…そう、じゃあバイバイ」 「うん、バイバイ」 |