櫻華純さまのお宅でフリー配布されていたので…!!誘拐ってきました…!!



※ポッキーの日記念小説
※仕事の休憩中
※お手をどうぞ、お姫様
シリーズ。


―――――――――――


「紫苑」

不意に呼ばれた。開いていたスケジュール帳を閉じ、呼ばれた方向へと首を傾ける。

「なに、ネズミ。どうしたの?」

振り向いた先には恋人兼仕事の相棒のネズミが、片手になにやらお菓子を大量に持ち、立っていた。

「どうしたんだ、それ?」

「差し入れだってさ、おっさんから」

「力河さんから?」

力河さんは元々、ネズミのマネージャーをしていた人で、今はネズミは勿論、僕のマネージャーをも勤めてくれている。とても優しい人で、母の火濫と知り合いなのだそうだ。(この間ネズミに聞いた)

恐らく、僕が甘いものが好きだという事で沢山買ってくれたんだと思う。昨日はシュークリームを差し入れてくれた。

「あとでお礼言わなきゃ」

「そんな事より食べようぜ、お腹空いた」

そう言ってガサゴソと力河さんから貰ったお菓子を漁るネズミ。モデルなのにお菓子食べて平気なのか、と言うと。僕達二人とも食べても太らない体質みたいで、つい先日、ネズミとケーキバイキングに行って大量にケーキを食べたり、力河さんからの差し入れのお菓子を食べても、全然体重が変わらなかった。モデルとしてはいいんだろうけど、男としては、この線の細い身体つきが変わらない事に少し残念な気持ちはある。

「あ、これ新作のやつじゃん」

「あぁ、それ美味しかったよ」

「あんたもう食ってたのかよ」

「新作のお菓子はだいたい食べてるし」

僕は基本、新作のお菓子はどんなものでも食べる。あ、甘いもの限定だけど。

「あ、」

「うん?どうかしたのか?」

にたり、と口元を妖しく歪ませるネズミ。

「紫苑、今日なんの日か知ってる?」

「今日?11月11日…」

はて、なんだったかと思考を巡らせると…。

「あぁ、第一次世界大戦終結の祝祭日の事かい?」

「…は?」

「あ、それとも聖マルチヌスの聖名祝日?」

「聖マルチ…え…?」

なにやら違うようだ。ネズミの溜め息と呆れ顔がそれを物語っている。

近くにあったポッキーの箱から数本ポッキーを取り出すと、

「今日はな、紫苑…」

「…うん?」


「ポッキーの日、って言うんだよ」


「ポッ、キーの日…?」

「ほら、11月11日の1さ、4本並んだポッキーみたいだって事でそう言われてんだよ」

「…へぇ、それは知らなかったな」

ふんふん頷いていると、ネズミがポッキーをくわえてこちらを見ている。

「…ネズミ?」

「もう一つ教えてやるよ。ポッキーの日には、ポッキーゲームをするのが流行りなんだ」

「えっ!?」

ほら、ともう片方を揺らし、催促するネズミ。あぁもう顔が熱い!

揺れるポッキーの端を口に含み、あまりの近さにまた顔が赤らむ。

「ふふ、紫苑顔真っ赤」

「うるさい、な」

「じゃ、先に折った方が罰ゲームな」

「えぇっ!?」

「用意、スタート」

そう言うネズミを皮切りに、一二口食べ始める。部屋にはカリカリッと言う音だけが鳴り、それ以外は音を忘れたかのように、とても静かだった。少しずつ近づくネズミとの距離に、緊張と恥ずかしさで、とてもじゃないが平常心が保てない。

(これ以上進んだら…)

もう既に互いの唇が触れてしまいそうな近さで、ネズミの吐息が、自身の唇に甘くかかり、震えるのがわかる。

(もう、ダメだっ…!)

ポキッ

「……あ、」

「…っ、」

あまりの緊張に、つい、折ってしまった。キスなんて、いつも仕事でしているのに、二人きりになると、ネズミの妖艶さが更に色濃くなり、とても緊張してしまう。と言うより恥ずかしい。

「ふふ、紫苑折っちゃったな」

「うぅ…」

「じゃ、罰ゲーム」

ちゅっ

それは一瞬だった。うぅ…と目を瞑り、唸っていた次の瞬間には、唇に柔らかな感触を感じた。目を開ければ、目の前には何度も惹かれたあの灰色の瞳に、至近距離で見つめられていて、その時「あぁ、キスされているのか」とわかった。

「あんたの唇、チョコより甘くて、病み付きになるよ」




甘い香りに誘われて


そう言ってもう一度ネズミの唇が僕の唇に重なった。


‐END‐

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