きみに敵うはずもなく、
8/24〜8/31までの拍手お礼文でした^^
遊園地に着くなり、ネズミはひらりと車を飛び降りる。 その身軽な動作と女の子の装いは、紫苑が思わず見惚れてしまうほど可愛らしかった。
「せんせ?何ぼーっとしてんの、混むから早く」 「え?あ、ごめん、すぐ行く」
きみに敵うはずもなく、
今日は快晴、ネズミの真っ白な肌に太陽の光が照りつけるのを見て、紫苑はしまったと思った。
「ネズミ、ちょっと待ってて、日傘買ってくる」 「は?」 「きみ、そのままじゃ日焼け…」
ぷっとネズミが吹き出す。 からからと小気味良い笑い声が、青空に吸い込まれていく。
「紫苑、忘れんなよ、おれは女の子じゃない。日焼けくらいどうってことないさ。ていうか、いつもだって半袖で過ごしてるだろ」 「あ、そっか。じゃあネズミって焼けない体質なのか」 「まあね」 「そういえば、今日はどうして女装を…?」 「紫苑が喜ぶかと思って」
えっ、と珍しく言葉につまる紫苑を見てネズミは満足げに笑い、腕をからめる。
「…確かに、すごく可愛くて…惚れなおしたよ、ネズミ」 「ふふっ、ありがとう。ま、それは理由の半分。もう半分の理由は、先生の外聞かな」 「え?」 「なんも考えてなかったの?せんせって意外とお人好しだったんだ」 「は?」
目をぱちくりさせる紫苑に、くすりとネズミは楽しそうに笑った。
「いくらなんでも、生徒と…しかも男子生徒と遊園地デートだなんて、見咎められたらあんた、ガッコ解雇されるぜ」 「そうだったっけ。きみがあんまり可愛いから気が回らなかった。…あっ、ネズミ」
ふにゃりと笑って紫苑はネズミの手を引く。
「は?なに?」 「観覧車乗ろうよ、観覧車」 「はあ?観覧車なんて、真昼になってもそんなに並ばないだろ、だから後で」 「そうなの?」 「あんた、遊園地来たことないの?まずは、せっかく朝早く来てんだから、人気のあるものからだろ」 「へぇ。じゃあネズミの乗りたいものから乗ろうか」 「あっ、じゃあおれ、あれ乗る!」
ネズミが指差したのは、絶叫系のジェットコースター。 さっと紫苑は青ざめるが、ごくりと唾を飲み込み、いいよと返事をする。
「じゃあ、チケット買ってくるね」
紫苑はこわばる笑顔でそう言い、チケット売り場に向かった。
あはははははっ、はははっ、ははっ
…ネズミ、そんなに笑わなくても……
なに、あんた、ジェットコースター苦手だったんだ、あはははははっ
昔からなんだ…だから仕方ないんだって…
ははっ、なら乗らなきゃいいのに
…だって、きみが乗りたそうにしてたから…
見栄張っちゃって…って、おい紫苑大丈夫か?顔色やばくない?
うー、頭いたい
じゃっ、とりあえずあそこでお茶でも飲む?なんか申し訳ないし、おれ奢るからさ
え、でもそれは…うっ
おいおい、しっかりしろよ
(つづく) 大人な紫苑が珍しく戸惑うターンです^^
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