04
「文武両道で才色兼備かと思いきや、サイコな電波さん?どこまでキャラ立てすれば気がすむのかしら?なるほど萌えね、そこが萌えなのねー!」
それが紫苑の話を聞いた沙布の感想だった。 一方、莉莉は少し考えてから紫苑に聞く。
「ほんとに、イヴくんとは会ったことないの?」 「それが…実は」 「実は?」 「夢の中で逢った、ような…」
莉莉と沙布は一瞬沈黙し、遠慮なく笑い出す。
「あははっ、紫苑までキャラが立ち始めちゃったわ」 「沙布、そんなに笑ったら紫苑に悪いって。せっかく話してくれたのに」 「莉莉こそ」
紫苑はふう、と息をつく。 「そんなに…変かな」
うーん、と莉莉は考える。 「やっぱり、どこかで会ったことあるんじゃないかな。覚えてないつもりでも脳は覚えてて、夢に出てきたとか?」
ぽんっ、と沙布は手を打つ。 「そう、それよ、きっと前世の因縁なのよ!」
なんだよそれは、ぼくはいたって真面目で… 反論しようとした、その時。
《…タスケテ》
「え?」 声が、聞こえた。あの夢に出てきた小動物…フェネックの声。 辺りを見回す。いない。ここにはいない。
《タスケテ…シオン》
その声は、頭に直接響いてくる。 助けてと繰り返す緊迫した声は、だんだんと瀕死の声になっていく。 焦燥感にかられる。 ガタン、と紫苑は席を立つ。
「ちょ、紫苑?え、授業は?」
沙布と莉莉に、早退すると言い捨てて紫苑は学校を飛び出した。
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