ありふれた生活
8/16〜8/24までの拍手お礼文でした^^
「しおーん」 「名前伸ばすなよ、ネズミ。あ、ここ学校なんだからちゃんと先生って言いなさい」 「しおんせんせー」 「…なんだよ」 「明日、日曜日なんだけど」 「うん、そうだね。だから?」 「察しろよ。デートしようぜってお誘い」
目をぱちくりさせたぼくに大袈裟なため息をつき、ネズミは勝手にさっさと日時を決めてしまう。
「てことで明日、10時に車でおれの家まで迎えに来てね。じゃっ、おれ次も授業あるから」
ひらりと優雅に手を振ってネズミは教室を出ていく。 ぼくは柄にもなくポカンと彼を見送った。
ありふれた生活 (ずっと夢見たこと)
10時5分前、律儀にもぼくはネズミの家の前に来ていた。もちろん指示された通りに、車で。 エンジンを切り、さて、車から出てインターホンを鳴らそうかと思ったところで、ひょこっとネズミが窓から顔を覗かせた。 急いで車窓を下げる。
「紫苑、もう少し待ってて。すぐ行く」 「あ、急がなくていいよ、待ってるから」 「おれが急いでるの」
ネズミはバタンと窓を閉め、また家の中へ消える。 そして待つこと5分。 10時ピッタリにドアから出てきたネズミを見て、ぼくは唖然とした。 そこに立っていたのは、見目麗しい美女。 水色のワンピースに白レースのボレロを羽織り、つばの広めの帽子を粋に被っている。
「…ネズ…ミ…だよな?え、もしかして双子のお姉さん?」
おろおろして思わず車から降りる。 長い黒髪を背中に流した『彼女』は、ふふんと皮肉に笑う。
「まさか。おれに女兄弟はいないよ。ふふ、見違えた?」 「う、うん。すごく、かわいい」 「ほら、ぼーっと突っ立ってないで紫苑、エスコートは?」 「え?あ、うん」
偉そうにすらりとした白い腕をネズミが差し出すものだから、思わずその手を取ってしまう。 後部座席のドアを開けようとすると、ぐいと手を引っ張られた。
「ん?なんだよネズミ」 「…助手席がいい」 「危ないからだめだって」 「危なくない」 「は?」 「紫苑せんせ、このおれを乗せて、危険な運転するわけ?」 「いやもちろん安全運転するけど、もしもの時…」 「やだ、助手席」
こっちはネズミを心配して言っているのに、当の本人は聞き入れようともせず、だだをこねる。 でも結局、無意識に頬を少しふくらませてむくれる表情と上目遣いに負け、ぼくはため息をつきながら助手席のドアを開けてやる。
「…これで満足かい」 「もちろん」
助手席のドアを閉め、自分も運転席に乗り込む。 エンジンをかけ、さあ発車しようとしたところで、行き先を知らないことに気付いた。
…ネズミ
うん?
どこ行くんだっけ
そーんなことだろうと思った
え?
全然計画練って来てないの?だめだなあ。 まっ、おれが考えてきたから問題ないけど。 ほら、ナビ貸して、目的地入れるよ
…きみみたいに慣れてないからさ
うん?なに、デート経験ないの?
ない
うそっ
こんなことで嘘つくかよ。…で、どこ行くの?
ふふっ、定番だけど…遊園地!
(つづく) 紫苑にとって、ちゃんとした恋人も友達も、実はネズミが初めてだったり^^ これはネズミが紫苑にいろいろ教えてあげるお話にするつもりです!
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