紫芋はモンブランになりたかったのです
!)ハロウィン2011企画に提出 『チーズケーキに恋をした』と同じ二人。 紫苑が弟子入りして数年後、一人前になりかけの頃の話
「トリックオアトリート!」
挨拶代わりに、紫苑は店のドアを開けるなり、嬉々として言い放つ。 厨房で着々と下準備を進めていたネズミは、視線を寄越しもせず「机の上」と言った。
「え?」 「用意してある」 「えー…」 「きっと騒ぐだろうと思ってな」
カウンターを回り込んで机を見てみると、色とりどりのクッキーが真っ白いプレートに盛られていた。 ピンクや黄色やオレンジや紫の、素朴ではあるがカラフルな色合いが、プレートの白によく映えていた。
「…準備がいいんだね、ネズミ」 「ふふっ、イタズラしたかったのか?」 「まあね」 「そういう時は、トリックアンドトリートって言えばいいよ」 「なるほど!」 「つまり、お菓子くれてもイタズラするぞ」 「じゃっ、トリックアンドトリート」 「もう遅い」
メレンゲを泡立て終わったネズミは一旦ボウルを置き、振り返った。
「トリックアンドトリート、紫苑」 「ざーんねん、せっかくそう言ってくれても、ぼくはお菓子持ってない。きみにイタズラしてもらおうと思って」 「へぇ。いい覚悟だな」 「だって今日は、イベントにかこつけて、イタズラしていい日だろ?」 「…あんたその解釈、ずいぶん歪んでんな」 「そうかな?…ところでさ、ネズミ」 「ん?」
紫苑はクッキーをひとつ、そっとつまみ上げる。 それは控えめな柔らかい紫色で、魔女のとんがり帽子の型に抜かれていた。
「これって何味?きみのことだから…クッキーの色は、色粉じゃないんだろ」 「もちろん」
得意気にネズミは唇を綻ばせ、ひとつひとつのクッキーを指差して説明を始める。
「ピンク色は苺、オレンジ色はオレンジピール、黄色はカボチャ、紫色は紫芋。これらのクッキーは今日は店頭サービスだぜ」 「例によって、高校生以下のお客さまに?」 「ご名答。あんたはもう、年齢オーバーだな」 「…じゃあ、くれないの?」
上目遣いにネズミを見上げると、ぴんっと軽く額を弾かれた。
「分かってるくせに。あんたは特別」 「良かった。大好き、ネズミ」 「あたりまえ。で、どれ食うの?」 「紫芋」
ネズミの優美な手が、優雅な動作で紫苑の手から紫のクッキーを取り上げる。 クッキーを持たない方の手で、紫苑の唇をとんとんとつついて開かせる。素直に開いた唇に、すっとクッキーを入れてやる。
「…どう?」 「おいしい、すごく」 「そりゃ良かった」 「ねぇ、ネズミ」 「うん?」 「紫芋って、まだ余ってる?」
唐突な質問に、ネズミは首を傾げる。
「ああ、残ってるけど。なんで」 「モンブラン作りたい」 「は?」 「今日くらい、ハロウィン仕様にしようよ?モンブランのマロンクリームに紫芋を混ぜて紫色にしてさ、それをとんがり帽子の形にデコレーションするんだ。そこに星形に抜いたカボチャのクッキーを載せて…」 「あのさ、紫苑。そういうプランは早めに考えろよ。あと数時間で開店だぞ」 「大丈夫!数量限定なら間に合うでしょ?」 「…もう、勝手にしたら」 「そうする。ありがとう、ネズミ」
紫芋はモンブランになりたかったのです きみのためにハッピーハロウィン
ネズミ、ネズミ!ねぇ見て見て、けっこう上手くできた!
…ひとつしか完成してないように見えるんだけど
うん
おい、店頭に並べないのか
だって、きみに作ったんだもん、お店には出さない。数量限定って言ってたでしょ?
だからって…
ね、食べさせてあげるから、口開けて?ネズミ
お粗末さまでしたorz あれ?久しぶりにネズ紫書いたら…なんか紫苑さんが小悪魔(°Д°) というか、素敵なタイトルに内容が全然追い付いてない!こじつけ感半端ない!(※いつものこと) いやあ、すいませんでした、ほんと。 あっ、今回もナチュラルに、会話のネタ元は友人です。 今日のお昼休みにネタ供給しました。ありがとう友人…。
ではでは、皆さま、企画参加本当にありがとうございました…!! 管理人は嬉しさのあまり、いつも以上にふわふわしてます! 地に足がついていませんww うわあ幸せ…!!(´∀`) はっぴーはろうぃん!!
タイトルは、巣さまよりお借りしました。
2011.10.31 (Mon)
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