05


人の子が一人、死んだからといって、日常は変わらない。
紫苑はいつも通りの朝を迎え、火藍のつくった朝食の前に座る。

今日は、目玉焼き。その黄色い卵を見ていると、ふいに山勢を思い出した。

もう戻らない、山勢。
失われた命は、どう足掻いても取り戻されはしない。

「…っ」

頬に涙が伝う。

あんなに、皆のために人々のために陰で戦っていたのに。
それを、守られていた人々は知らない。
誰にも分かってもらえないまま、山勢は死んだ。

紫苑は、しゃくりあげて泣いた。

「紫苑、どうしたの?ごはん、不味かった?」

火藍が驚き、慌てる。

「違う、よ、母さん。おいしい」

箸を手に取る。

「おいしいんだ。生きてると、母さんの料理が、すごく、おいしい…」

一度喪われたら、もう戻らない。
それは、割れてしまった卵と同じ…。


Humpty Dumpty sat on a wall.
Humpty Dumpty had a great fall.
All the king's horses and all the king's men
couldn't put Humpty together again.

ハンプティ・ダンプティが 塀の上
ハンプティ・ダンプティが おっこちた
王様の馬みんなと 王様の家来みんなでも
ハンプティを元に 戻せなかった





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